反省しても反省しても
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半日程歩いたところで、木々の向こうからキラキラと光を反射する湖面が見え始めてきた。
元気いっぱいの見習い騎士が、湖で待機しているだろう教師や騎士たちに自分たちの到着を知らせに走り出した。
それから三十分ほど歩いていくと、騎士たちや教師が迎えにやってきて合流することができた。
カインはアルゥアラットの背から騎士の背へと乗り換えさせられ、湖をぐるっと半周回って観光用の公園まで移動したところで馬車に詰め込まれた。
最初に襲われたグループの生徒たちは全員無事で、すでに馬車で学校に向けて出発済みだという。
急いで手配した馬車の為、カイン達が乗り込んだ馬車は貴族用ではなかった。
「カイン様、大丈夫? 振動とかが足に響いたりしてない?」
「足はちょっとひねっただけだから大丈夫だよ。それより尻が痛い」
カインが自分の尻をさすりながらおどけて見せれば、向かいに座っていたジェラトーニはほっとしたような顔を浮かべた。
いざという時に走って逃げられないからという理由でアルゥアラットや騎士に背負われていただけで、長く歩いたり走ったりしなければ大して痛まない。
ハッセたちと一緒に合流した医師に包帯でがちがちに足首を固定されているのもあって、大事には至っていない。
ジェラトーニやアルゥアラット、ディンディラナたちはカインが身を挺して自分たちを守ったのだと認識している為か、いやに親切に世話を焼こうとしてくるようになった。
「湖に向かう道すがらでも言ったけど、自分の為にやった事だから気にしなくていいって」
後になって考えてみれば、という事になるのだが。
魔獣の巨大狼と対峙した時、カイン達はほとんど移動をしていなかった。騎士からの「逃げろ」という叫びが木々にこだましてどちらから聞こえてきたのかわからなかったから動きようがなかったというのもあるのだが、警告の後すぐに騎士が吹っ飛んできて狼と対峙することになってしまっていたからだ。
逃げようがなかった為にカインが風の結界を作り出してその場にとどまり、その周辺で戦っていたのだから、予定していた行程からほとんど外れていなかったのだ。
であれば、たとえ笛の音が途切れたとしても結界に閉じこもって待っていれば捜索隊が順路をさかのぼって迎えに来てくれた可能性があったのだ。
ディアーナを悲しませるわけにいかない、ディアーナと再会せずに死ねるもんかという意地と思い込みでカインはその場で戦闘することを選んだわけだが、一歩間違えばジュリアンと騎士が取り返しのつかない事になっていたかもしれなかった。
「まぁ、結果オーライですよ。俺たちも、ジュリアン様があんなに強かったんだなーっていうのが知れてよかったし」
「将来、僕たちの王様になる人だもんねぇ」
「っていうか、凍ってない動ける方の狼を引き付けていたカイン様の方があぶなかったんだから」
「そうそう。それに、風の中でじっとしていたらさ、僕たちに手が出せないと知った魔獣たちが別のグループを襲いに行ったかもしれないんだから」
馬車には、アルゥアラットとディンディラナ、ジェラトーニが一緒に乗っている。
ジュリアンは今後について話し合いをするために教師や騎士のえらい人と一緒の馬車に乗っていて、女子二人は女性教師と一緒の馬車に乗っている。
男子のみ友人のみの気安さか、安全が確保された安心感からか、皆が気楽な感じでカインを慰めてくる。
カインは、自国でもアルンディラーノを危ない目に合わせたことがある。カッとしたり思い込んだりすると思慮が足りなくなることがある自分に対して反省するばかりだった。
「はぁ。ありがとう。でも、反省はする。もっといい方法があったんじゃないかって、どうしたって考えてしまうよ」
「まぁ、そりゃあね」
その後、一通り男子四人で「あの時こうしたらどうだっただろうか?」という話題で盛り上がったのだが、十二歳男子四人が集まったところで出たのは大した案ではなかったのだった。
無事に貴族学校の寮にたどり着いた後、疲れただろうから今日は解散してそれぞれの部屋で休むようにと指示が出た。
カインも、足首が熱を持ったり痛むようなら申し出るようにと言われ、部屋へと送り届けられた。
しばらくの間、同室のジュリアンが戻ってくるのを待ってはみたものの、疲れ切っていたカインはきがえもせずに布団に横になった瞬間に眠ってしまったのだった。
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お話のキリの良さの都合で短めでした。
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