②
「そう…」
やはり、あまり好まれるものではないのか。
何だか、1人取り残されたようで、少し寂しくなる。
「それでも、私はこれがいいの。
この物語には、誰かを愛した痛みがある。
他の物語では、それを味わう事は出来ないわ」
「左様ですか…」
一瞬、我が子に向けるような、慈しみに似た笑顔を、彼が見せた様な気がした。
「かしこまりました。それでは、5577番シアターにお進みください。
どうかごゆっくり。
生憎、今日は、貴方以外には誰もいらっしゃらないものですから…」
「ありがとう」
そのまま、足を進めようとして、ふと、私は疑問を覚える。
「ちょっと、待って。
ここって、確か、3番シアターまでしかないんじゃ…」
振り返るが、そこには誰も居なかった。
受付けごと、老紳士は、その姿を消し、確かに彼が存在したその場所には、ただの空間が広がっているだけだった。
ー夢…ではないわよね。
試しに頬をつねってみたが、当たり前のように痛みが襲う。
これが明晰夢なら、この程度の効果は意味を為さないのだが、今は、これ以上の確認のしようがない。
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