いくつかの未完成な思索と、その走り書き

1.

 アーキテクチャによる支配は、直接意志を封じるものではないから、支配者側が意志は封じていない、すなわちこれはあなたが選択したことであり責任はあなたが取るものだ、というエクスキューズを用いることができる危険性を孕むのではないか。制度設計者は善性であるならば、この点に留意する必要がある。


2.

 自分の頭で考えた失敗でなければ、次に生きることはない。すなわち成長はない。自己に経験としてプロセス、その他の枝葉末節が内包されたとき、有用な引き出しになる。


3.

 すべての物をある物へ還元させようとする評論は、生み出した者の人生を無視している。セオリーだけで物が作られるわけではない。むしろ個人的体験と、そこで獲得された価値観、哲学といってもいいものが本質だと思慮する。


4.

 沈黙は命題の肯定でないこともあるが、一般に、現状を認証するものと認められる。こと社会的問題に関しては。


5.

 賞を取ってから数年、面白さや、かくあるべきというジャンル論に囚われていた気がする。すべてを捨てて構わない。そもそも小説は面白さを目指さずともいい。ある反復と差異の中で、受け手が見出すにすぎない。結果的に創られる、ということが大事なのだ。「センスの哲学」にかかれていたことが、やっと身体に馴染んできた。

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