9/19 日本人の識字率に関する記事、概要と所感

 9/19日付け読売新聞文化面より。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/20230918-OYT8T50055/


 見出しを「識字率高い日本人 根拠曖昧」として、横山詔一氏・国立国語研究所教授による寄稿。

 成人男女を対象としたリテラシー調査は1948年にGHQによって行われた一例のみとし、これによる結果が「識字率の高さ」を主張する根拠となっている。

 しかし実際は意図的でないか、と推測される0点の受験者が含まれていて正確性を欠いているのではないかという指摘、また報告書における付記には「非識字者の割合は極めて少ない。しかし、リテラシーを持つと見なせる識字者の割合は4.4%」とあり、生活能力として文字言語を理解する能力は高いと言えない、という概要である。



 以下所感。

 読解力の低下に関してはしばしば指摘されており、国際学習到達度調査(PISA)においても2018年の調査では全参加国中8位(2015)→15位(2018)と大きく順位を下げているというデータがある。もっともPISAにおける読解力の定義は、

「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、取り組む力」

 であり、必ずしもGHQ調査で測られたものと同一視することはできないが、前述の記事を読むと、そもそも日本人はリテラシーが高かったのだろうか、という疑問は抱かざるをえない。

 横山氏が指摘するように、1948年時点で見積もられた「リテラシーを持つと見なせる識字者の割合は4.4%」がある程度正確だとするならば、すなわち文化の発展について、これまで当然だと考えられていた理論も見直さなければならないであろうし、ひいては今われわれが直観し見積もる相手方のリテラシーについても修正を迫らえるのではないか。このことが科学的に検証されれば訴求の方法、マーケティングについて精密な検討ができるように感じる。

 もっとも、議論を交わそうとする相手にリテラシーがなければこの話は通じないだろうし、そも記事の内容を読み取ることはできないだろうが。

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