アリアの過ち 4

 アリアは周囲に黙って施設を離れる事にしました。


 ミクリが目覚める方法を探す為の旅に出たのです。


 基本は野宿になる事が続きましたが、前世で培ったサバイバル術のお陰で盗みに手を染める事はありませんでした。


 時にはホームレスの列に並んで配給を貰った事もありました。


 お巡りさんに補導されそうになった時は透明になる魔法で逃げました。



 ミクリを目覚める方法について。


 もちろん当てはありました。


 アリアの特技と言えばやはり魔法。


 手順さえ理解すればどんな魔法も使いこなすことができる。


 アリアは国内の図書館を片っ端から巡ることにしたのです。


 読み漁った書物はどれも分厚いものばかり。


 今の姿では体力も集中力も年相応で、1日間で読了できる数は精々10~15冊。


 全ての書物を読み終えたらまた次の図書館へ移動する……。


 時にそれらしい魔法を見つけたらもちろん試す。


 しかしミクリが目覚める事はありません。


 気付けばそんな生活が5年も続いてしまいました。


 とうとう行く当てもなくなり八方ふさがりになったアリア。


 悩んだあげく……。


 最後の望みをかけてカグラザカの屋敷を訪れたのです。



 ◇ ◇ ◇



 ご子息は17歳になっていた。


 姿を見るや否やついつい心が躍ってしまい尾行した。


 でもすぐにばれてしまい、自分がアリアであることまで見抜かれた。


 本当は会うつもりなどなかった。


 ミクリはもう二度と両親と会うことはできないというのに。


 大好きだった姉とも未だに再会できずにいるというのに。


 私だけがのこのこと……この場へ戻って来てしまった。


 罪悪感が押し寄せる。


 しかしここにはきっとある。


 きっとあったはずだ。


 魔法の名家と言われたこの屋敷には……。


 全ての不可能を可能にする禁断の魔法を記した書物が――。



 私は正式にカグラザカへ出戻りする事にした。



 その後、紆余曲折あったが……ミクリがようやく目を覚ました。


 私は心の底から嬉しかった。


 それからしばらく経ったある日の事。


 カグラザカの屋敷にサーヤがやって来た。


 彼女がクノンの姉であることはすぐに分かった。


 すぐにミクリへ伝えようとした。


 でもこの頃のサーヤは他人ひとの心を見境なく土足で踏み荒らすような危険性を孕んでいた。


 生き別れた妹を探す事だけを全て・・としていた。


 その必死さは私にとって脅威でしかなかった。


 せっかくミクリが目を覚ましたというのに……。


 ようやく心を取り戻したというのに……。


 心を踏みにじられてなるものか!


 私は私達の心にトラップを仕掛けた。


 サーヤが心を覗き込もうとしてきたその時に、彼女の精神へ攻撃を与える魔法を――。

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