その名はオブリビオン(後編) 4

 余裕の表情を見せるアズサ。


「あら、ミクリじゃない。貴方こそどうしたの? いつものサボり癖?」


 対してミクリは銃を構える。


「質問しているのはこちらだ。貴様、カレンお嬢様に何をした?」


「あら? 見ていたんじゃないの? いいわ、教えてあげる。お前馬鹿だもんね。このくそガキがうるさいから黙らせてやったの」



「アズサ貴様あああ!!」



「だったら撃ってみろよ! こっちには人質が――」



 !?



 驚くアズサ。


 抱きかかえていたはずのカレンが消失。


 いつの間にかミクリの後ろに瞬間移動しているのです。


 ついでにレイも一緒に……。


 ミクリは既に瞬間移動マジックを成立させる射程距離に入っていたようです。


「しまッ――」


 焦りの表情を見せたアズサ。


 ミクリは容赦なく銃のトリガーを引く――。



 が……瞬間何者かがミクリの手首を掴んで振り上げさせた!



「何ッ!?」



 ズドン!!



 天に向かって飛んでいく銃弾。


 間髪入れずに鋭い拳がミクリの人中じんちゅう目掛けて飛んでくる。


 その男、シンドウは気配を悟られること無くミクリに近づき隙を突いたのです。


 ミクリは間一髪で受け流し、銃口を向け――。



 !?



 蹴り飛ばされた銃が宙を舞う。



 すぐに手を伸ばすが振り払われ奪われる。


 奪った得物でトリガーを引くシンドウ。



 その指は空を踏む。



 ミクリのすり替えマジックで既にスパナに変えられていたのです。



「チッ!」



 シンドウは舌打ちしながらスパナを投げつける。


 ミクリがかわしたことでスパナがコツンと地面に落ちた――。



 次の瞬間!




 シュババババババババババ――――!!




 まるで開始を告げるゴングが鳴ったかの如く、凄まじい格闘が始まったのです。

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