メイド長はパワハラ上司? 中
さて、メイド長室に一人取り残されたミクリ。
上司が席を外す間、罰として拘束の魔法を食らいました。
これを自力で解除するには相当な技術と時間と集中力が必要な訳で……。
流石のミクリもお手上げ状態と言わざるを得ません。
これはメイド長が戻って来るのを大人しく待っていた方が良さそうです。
しかしミクリ。
「⊒⊠≞⊊⋛≉∷⋗⋂∱⋥∫⋛⋙≏≙≷⋖∆√⊏⋕⊹⊾∪⊁≺∠⋼⊰∉≤⊮≡∋⊖⊴≺⊑⊋≓⊓⋜⊏⋴≢⋾≿⊏∁≹⋤−∰∺⋀⋭∙∭⋤≧∤≡⋷≨⊲∗≀⊻∵∜⊇⋍⊬⋎∙≻⋭⊨−⋤∗≇⋚⊤⊆⋾⊞∌∌≋⊓⊶⊾≖⋪≙⊜≌∈⋣∃⊏⋃≚⊤≘⋐∟⋫⊌≕∉≞∦≐⊓∠≛∜∫∽∀⊴⋭⊃∭⊷⋂∁⊃⊼≷≔⊵⊒≸⊕≋⊹⊛∭∛⊆≝≹∀≢⋞⋞⋿∤――――」
無謀にも呪文を唱えて、解除を試みているようです。
なぜなら――。
うおぉぉあああ! マズイ……。漏れるううう!
尿意を催しているのです。
1時間後……。
「――――⋐⊝≩⋿∫≴∟⋪≣⋄≆≸∧⊎≟∾⋐∧≕⋥∱⊘≩⊵∩⋿∽≌≀⊩⋧≹⊊⊺≬⊧⋅≧⊵⊕∍⋓⊼∰≍∄⊽……こ、これでどうだ。解除!!」
フシュウウウン。
なんだか力が抜けるような音がして、遂にミクリは自身を縛る拘束魔法を解除しました。
「やった!! 急げ! 漏れるー! やばい、やばい、やばい、やばい……」
大急ぎで部屋を飛び出し、長い廊下を猛ダッシュ!
あとは突き当りの角さえ曲がればゴールは目前です。
その時。
曲がり角から人が出てきました。
「うわあああ!」
「きゃあああ!」
ドーン!!
ミクリは相手と衝突。
「
どうやらその相手は同僚のアズサだったようです。
そしてミクリの方へ目をやると。
「え!? ミクリあんた……」
ピンポンパンポーン!
乙女の貞操を守るため、しばしウグイスの鳴き声をお楽しみください。
ホーーーーーーーホケキョ!
「うわあああん! ひどいよおおおお! うわあああん!
その場にへたり込むミクリ。
まるで子供のようにギャンギャン泣き喚きます。
「ちょ、そんな大声で泣くなよ! これじゃあ私が悪いみたいじゃん!」
慌てふためくアズサ。
ミクリが泣き止む様子は全くありません。
その間、二人の横を素通りしていく使用人達はあからさまに目を逸らしていきます。
「いや、違うからね。私が泣かしたんじゃないからね!」
アズサは必死に弁明を試みますが……皆、そそくさと早歩きで去っていってしまいます。
そしてとうとう。
「あっ! アズサがミクリをいじめた! パワハラだ!」
この場へやってきたカレンから指を差されました。
◇ ◇ ◇
メイド長室。
「で? 何があったのか説明して下さい」
アズサ、カレンを前にメイド長が尋ねます。
ミクリは現在シャワーを浴びている為、ここにはいません。
まずはアズサの言い分から始まります。
「廊下の角でミクリが急にぶつかって来たんです。私だって被害者ですよ。余裕を持って行動しないミクリが悪い」
それを聞いたカレン。
思い出したよう口を開きます。
「そういえば魔法のレッスンが終わったあと、ミクリはサーヤに呼び出されたんだよ。サーヤがパワハラしたんじゃないの?」
カレンは指を差しました。
それにつられてアズサの視線もメイド長の顔面へ刺さります。
「わ、私は、ほら、あれですよ。ミクリへ大事な話があって呼んだのですが……あの子の粗相が発覚したので……」
「それでつい出来心でやってしまったと!?」
と、カレン。アズサも後に続きます。
「え!? そうなんですかメイド長!? とうとうやってしまったんですか?」
「それは私だってあの子の粗相が無ければこんなことには……現に私はあの子のフォローをしていて、その罰に拘束の魔法を掛けただけで……」
「やっぱり、サーヤがパワハラしたんだ!」
「メイド長……。それパワハラですよ」
やはり二人の視線がメイド長へ刺さります。
「う……。確かに私も度が過ぎたかもしれません。でも、ミクリは私の拘束魔法を解除しています。あの子は少なくとも
それとなく自身の非を薄めるメイド長。
流石、多くの部下を束ねる管理職です。
「じゃあ、ミクリとぶつかったアズサが悪い!」
カレンの人差し指の先っぽがアズサの方へ移動します。
「いやいやいや、ちょっと待って下さい。私は突然ミクリにぶつかられたんですよ! なぜ私が悪くなるんですか!?」
「アズサ……。両成敗って言葉を知っていますか?」
The! 管理職!
「わたし知っているよ。ミクリとアズサがぶつかったから、二人とも悪いってことだよね」
「ええ、その通りですお嬢様」
「ちょ! だからなぜ私が悪くなるんですか!? あっ、ところでミクリの粗相って何だったんですか?」
埒が明かないと感じたアズサ。
一旦、話を逸らせます。
メイド長は溜息をつきました。
「はあ。仕方ありませんね。正直に話しましょう……。お嬢様?」
「へ? わたし?」
「お嬢様……近頃、暴飲暴食をしていますね?」
「え!? な、なんのことかな~」
カレンは急に目を逸らすと、額からダラダラ汗を流します。
「誤魔化しても無駄ですよ! ミクリの懐にポテトチップスやチョコレートの領収書が大量に入っているのを先ほど透視しました。それをお嬢様が全て食べたという目撃証言もあります」
「ぜ、全部じゃないもん! ミクリと半分こしたんだもん!」
「半分こ? ではやはり半分は食べたんですね?」
「はっ! しまった!」
自身の口に両手を当てるカレン。
メイド長に誘導尋問されたことに気付きました。
「お嬢様、勝手に間食してはダメと散々言ってきましたよね? ですからその責任をミクリに取らせたのです」
そして二人の視線が5才の女の子へ向かって振り下ろされました。
そのあまりの圧に耐え切れなくなったカレン(5)。
「うわあああん! ごめ゛ん゛な゛ざーい゛! う゛え゛え゛え゛え゛え゛ん゛!!」
とうとう泣き出してしまいました。
まだ子供なので仕方ありません。
そこへ扉がガチャっと開きます。
「あっ! 二人がカレン嬢様を泣かせた!」
シャワー室から戻ったミクリがメイド長とアズサに向かって、交互に指を差しました。
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