わたしをグアムに連れてって 2

 ミクリは得意気になって尋ねます。


「いかがですかお嬢様?」


「すごーい! わたしグアムに来ちゃった!」


 カレンは嬉しそうに砂浜を駆け出します。


 すると。


「あ、待って!」


 ミクリがカレンの腕を引っ張ります。


「あくまでここは病室内なので壁がありますからね」


「……あ、本当だ」


 カレンは見えない壁をコンコンとノックします。


 見た目の風景では永遠に砂浜が続いているのに不思議です。



「へえ、これってバーチャル映像ってやつでしょう?」


 先程まで興味がなさそうだったアズサも関心を示しています。


「そう、それ。まさに魔法と科学の融合ってやつ。凄いでしょう」


「確かに。これは凄い」


「でもそれだけじゃあ、ないんだよ」


 ミクリは押し寄せてきた波に手を突っ込み海水をすくい上げると。


「それ!」


 アズサに向って浴びせます。


「うわ! 冷たい! ええ!? なんで!?」


「どう? 本物見たいでしょう?」


 魔動製品の能力はあくまで『バーチャル映像の出力まで』ですが、そこにミクリがひと手間を加えました。


 映像に合わせて空気の密度、粘度、温度等々をコントロールして、あたかも水に触れているように錯覚させているのです。


「ミクリ! わたし泳ぎたい!」


 カレンが瞳を輝かせながらミクリを見つめます。


「そう来なくっちゃ!」


 ミクリが杖を振ると、三人の服装は水着へと早変わりしました。



 そう、今からここは自分たちだけのプライベートビーチ。


 少女たちは束の間のバカンスを満喫するのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る