刻印無しの魔法使い 6

 ミクリを仕留めた少年。


 今度はコバヤシを殺す為、一歩ずつ近寄っていきます。



 コバヤシは必死に杖を握ろうとしますが、出血もひどく叶いません。


「くそ、もう……ダメか。お嬢様……早く逃げて……下さい」


 教室の中にいるカレンへ呼びかけます。


 どうか裏口から逃げて欲しい。


 教室の中にいる人たちだけは生き延びて欲しい。


 そんな願いを込めるコバヤシ。


 しかし――。


 それとは裏腹に扉がガラッと開くと、中から飛び出してきたのはカレンでした。


 カレンは倒れ伏すコバヤシの前に立つと、小さな身体で目一杯の両手を広げて立ち塞がります。


「コバヤシを殺さないで!」


「お、お嬢様!?」



 自分が守るべき者が、いま自分の盾になろうとしている。


「なにを……しているんですかお嬢……様? 早く……逃げて」


 コバヤシは驚愕します。


 必死に首を横に振るカレン。


 少年はカレンを睨むように見下ろします。


「あ? なんだてめえ。どけ、今はとても気分が良いんだ。弱いガキに用はねえ」


「コバヤシはこの前、ジャングルジムから落ちたわたしを守ってくれたの! だから今度はわたしが守るの!」


「あ? 知らねーよそんなの。どけ!」


「嫌!」


「そうかい! だったら、まずはお前から殺してやるよ! あの女のようにな!」


 少年は背後で倒れ伏すミクリに向かって親指を差します。


 未だ倒れ伏したままのミクリ。


「死んでないもん」


「あ?」



「ミクリは不死身だもん。起きてー! ミクリー!!」



 カレンの声に反応して、ミクリの右手が微かに動きます。


 本当にまだ生きていたミクリ。


 辛うじて意識を取り戻したようです。



 彼女は最後の力を振り絞って懐から杖を取り出すと、少年のうなじに杖を向け……。


 呪文を唱えます。



「ツイ……スト」



 ミクリの杖から発射された青白いビームは少年のうなじに直撃しました。


 少年はそのことに気付きますが……。


 もう手遅れです。


「な! てめえ、くそがあああああああああ!!」



 少年の首が勢いよく回転し捻り切れました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る