刻印無しの魔法使い 3

 慌てふためくコバヤシ。


 ミクリもつられて慌てます。


「ええ!? 気付いてなかったんですか?」


「一体いつからこうなっていました?」


「最初から」


「だったらその時に言って欲しかったんですけど! ああああ、なんか急に痛みと眩暈が!」


 ふらふらと倒れ伏すコバヤシ。


 コバヤシの意識がだんだん薄れていきます。


 捻じれ曲がってプラプラの右腕。


 内出血していて真っ黒になっています。


 腕の皮一枚で繋がっているとはこのことです。


「ちょ、大丈夫ですか?」


 ひとまず治癒魔法で神経を繋げるミクリ。


「ぎゃああああ!!」


 ぷつんと切れていた神経が繋がってコバヤシの右腕に痛みや感覚が蘇ります。


 ミクリはさらに治癒魔法を続けます。


「でも何故こんなことに……」


「ミ……クリさん。おそらく……近くに……奴がいる」


 絞り出すように声を出すコバヤシ。


 しかし、コバヤシは激痛のあまり意識を失います。


「奴?」


 ミクリは昨晩メイド長から言われたことを思い出します。


 近頃、魔法使い達を襲うという奇妙な現象。


 その事件の被害者は首が捻り切れて亡くなりました。


 それはおそらく魔法使いが関係しています。


 そして今、コバヤシの右腕が捻り切れたこの現象。


 そう、近くにいるのです。


 ミクリやコバヤシの命を狙う者が。


 禁断の魔法を使う危険な存在。


 刻印無しの魔法使いが……。



 ミクリがかけた治癒魔法のおかげで間もなく意識を取り戻したコバヤシ。


 勘のいい彼は気付きます。


 危険な魔法の気配が近づいていることに。


「危ない!」


 咄嗟に左手でミクリを突き飛ばすコバヤシ。


 すると、どこからともなく青白い光線が走ってきてコバヤシの左腕に当たりました。


 次の瞬間。


 ブチブチブチブチ!!


「うわああああ!」


 なんとコバヤシの左腕が捻じり切れたのです。


「へえ、僕の魔法を食らって二度も生き残るなんて凄いじゃないか!」


 !?


 声が聞こえた方へ顔を向けるミクリ。


 外部の歩道にいた少年が柵を乗り越えて園の敷地内に着地しました。


 懐から取り出した杖をミクリに向けると。


「ツイスト!」


 詠唱と共に先ほどの青白いビームが飛んでくるのでした。

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