刻印無しの魔法使い 2
翌日、カレンが幼稚園でお絵描きの時間中。
教室の外にはミクリの姿がありました。
いつもは送迎以外でここに留まることはありませんが、メイド長からの指示を受けて身辺警護にも加わることになったのです。
さすがに殺人犯が周囲をうろついているかもしれないという事もあって、園児の数は通常の半数しかいません。
ふと、教室内のカレンと目が合いました。
すると満面の笑みで手を振ってきます。
ミクリもそれに答えるように手を振ります。
かれこれもう10回はこの
「ああ~、お嬢様可愛いなあ」
身辺警護も悪くないかも。
そう思ったミクリ。
今度は隣にいた黒スーツの男に話しかけます。
「いいなあ。コバヤシさんは」
話しかけれた男は予想外の言葉に驚きます。
「え!? 自分がですか?」
彼は日頃から外出時のカレンの身辺警護を請け負っています。
大きな外見とは裏腹に普段から影が薄いこの男。
そう言えばこいつずっと側にいたなと思った時に存在感が急に現れる。
そんな空気のような人物です。
「そうですよ。ずっと近くでカレンお嬢様を見守る事が出来て羨ましいです」
カレンが幼稚園にいる間、いつもミクリはお屋敷に戻って雑務に加わり忙しなく働いています。
まあ、途中さぼっていることもありますが……。
とにかく、ミクリはこのほのぼのとした雰囲気を羨ましく思ったのでしょう。
それに対してコバヤシからの返答は。
「いや、自分からしたらミクリさんの方が羨ましいです。お嬢様は自分に対してあんな笑顔見せてくれませんから」
そう言って
ちょっと可哀そうです。
ミクリはどうやって励まそうか考えていると。
「でもこの前ジャングルジムから落ちたお嬢様を助けた後これを貰ったんです」
コバヤシは嬉しそうに懐から画用紙を取り出しました。
それはカレンが描いたコバヤシの似顔絵。
『ありがとう』という言葉が添えられています。
「へー。良かったじゃないですか」
「本当に、本当に感激しているんです自分! これは家宝にします!」
相当嬉しかったようですね。
ところで、ミクリはずっと気になっていることがありました。
「ところでその腕、どうしたんですか?」
ミクリはコバヤシの右腕に指を差します。
「腕?」
視線を落とすコバヤシ。
すると……。
「う、うわああああ! 何だこれはあああ!!」
彼の右腕があらぬ方向に捻じれ曲がっていたのです。
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