迷子の魔法使い 4

 深夜――。


 カレンは夢を見ていました。


 それは憧れの魔法使いとの思い出。



 ◇ ◇ ◇



 今から二年ほど前の事です――。


 カレンは不思議な色に輝く綺麗な蝶々を追いかけていました。


 そしてその内に自身が迷子になったことに気付きます。


 そこには誰もいません。


 ここが何処なのかも分からない。


 どうやって帰えればいいのさえ分からない。


 だんだん心細くなって……ぽろぽろ涙が溢れてきます。


 そしてとうとう大泣きしてしまいました。



 すると、目の前にたくさんの蝶々が集まって来て……それが人をかたどっていきます。


 その様子に魅了され、いつの間にやらカレンは泣くことをすっかり忘れていました。


 その蝶々達が一斉に飛び立つと、そこにいたのは一人の少女。


「あら、可愛いお嬢さん。どうしたの? もしかして迷子?」


 カレンはこくりと頷きます。


「素直でよろしい。じゃあ、私があなたをおうちまで連れて行ってあげる」


 少女は魔法で一本の箒を出現させます。


「じゃあ、これに跨って」


 カレンは促されるように箒に跨ると……少女はその後ろに跨って片手でカレンの身体を抱きしめます。


「しっかり箒に捕まっててね。それじゃあ、いくよ……レッツゴー!」


 二人を乗せた箒はぐんぐん上昇していき、お屋敷に向かって一直線に飛んでいきます。


「あなたはだあれ?」


 カレンは尋ねます。


 少女はふっと笑みを浮かべて答えます。


「実はね、私も迷子なの」


「まいご?」


「そう、私も帰るおうちを探しているの。だから……私は迷子の迷子の魔法使いさん……かな」


 それは綺麗に輝く大きな満月の夜でした――。

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