迷子の魔法使い 3

 両手をばたばた動かして慌てるアズサ。


「ちょ、お嬢様! 人聞き悪いですって! あれ、ミクリじゃないから!」


「わあああん! ミクリが死んじゃったよー!」


「ほら、さっき身体が爆発したでしょう! 人は突かれたくらいで頭も落ちないし爆発もしません! きっとミクリが魔法で操ってた人形だったんですってー!」


「…………本当?」


「ほんとほんと、私はお嬢様に嘘は付きません」


「じゃあ……。もし嘘ついたら鼻からメロンクリームソーダ飲み干すやつ……見せてくれる?」


 鼻からメロンクリームソーダを飲み干す芸は最近のカレンのお気に入りです。


 因みに意外と高度な魔法なのでミクリしかできません。


「う、それは……」


 思わず戸惑ってしまうアズサ。


「わあああん! やっぱり嘘なんだあああ!」


「わ、わわ、分かりましたよ。やりますから! もちろん嘘だったらですけど……」


「本当? じゃあ指切りね」


 そして小指と小指を絡め合う二人。


「「指切り拳万~、嘘付いたら鼻からメロンクリームソーダ飲み干すやつ見~せる、指切った!!」」


「じゃあアズサ、今から本物のミクリを探しにいくよ。レッツゴー!」


「お、おー!」


 一応掛け声に答えるものの、思わずため息を吐くアズサ。


「はあ……。くそう、ミクリの奴ー、お嬢様に変な芸を見せやがって……。あいつ見つけたら殺す」



 ◇ ◇ ◇



 こうしてご令嬢と使用人(廊下の掃除係)の二人によるミクリの捜索ごっこが始まりました。


「ミクリ―、どこー?」


「おーい、いたら返事しろー!」


 屋敷内を隈なく探していきますが、ミクリの姿はどこにもありません。


 すると……。


「あら、どうしたんですか?」


 出くわしたメイド長が尋ねました。


 カレンは無垢な笑顔で返します。


「ミクリを探してるの。サーヤは知ってる?」


「それが私にもさっぱり……。本当、あの子には困ったものです」


 と、言いつつアズサへ耳打ちしていきます。


「彼女にはある理由で暇を与えました。余計な心配をさせぬよう、しばらくの間お嬢様の気をミクリから逸らせて下さい」


「が、がんばりまーす」


 アズサは苦笑しつつも、そう言うしかありませんでした。


 結局、ミクリを見つけることは叶わず……カレンは大泣き。


 アズサは何とかそれをなだめて、寝かしつけたのでした。

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