第23話

 (※バレリー視点)


 私は、ジョエルにゲイブとの浮気のことは何も聞かなかった。


 彼は私のところへ戻ってきてくれたのだから、過去を蒸し返す必要はない。

 今では私たちの仲も元通りで、幸せな日々を送っていた。

 ジョエルも少しずつ元気が戻ってきて、今では完全に元通りだ。


 浮気を知った時は本当にどうしようかと思ったけど、乗り越えることができた。

 あれだけのことを乗り越えたのだから、これからどんな困難がやってきても、私たちならきっと大丈夫だわ。


     *


 (※カールトン視点)


 私の生活は、順調だった。


 一時はどん底だったが、ジョエルと出会ってから、私の人生は変わった。 

 難病を治せる医者となった私は、富と名声を手にした。

 そして、今までやったこともない、新しい遊びも見つけた。


 私は今日も、ギャンブル場に来ていた。


 始めてからまだ数日だが、相変わらず私は勝ち続けている。

 どうやら私には、ポーカーの才能があるらしい。

 テーブルに着き、ゲームが始まった。

 私は配られた二枚のカードを確認した。


 なかなかいい手だ。

 相手の顔を確認すると、何人か初めて見る顔もいた。

 まあ、ここでは私の方が新人なので、そんな私にとっては、まだ出会っていない相手はたくさんいる。

 めくられていくカードを見て、私は笑みを浮かべた。


「コール」


 いい感じになってきた。

 たぶん、これならいける。


「レイズ」


 しかし、相手も引かない。

 それでも私は、勝負することを選んだ。

 今の私はついている。

 今までも、勝ってきたんだ。

 今日だって、きっと勝てる。


「コール」


 手札を開示した。

 しかし結果は、私の負けだった。

 私はショックのあまり、言葉が出なかった。


 勝った男は、私からチップを回収しながら、こちらを向いてニヤニヤと笑みを浮かべている。


「あんた、初心者だろう? いるんだよなぁ。ビギナーズラックでたまたま勝っていただけなのに、それが自分の実力や才能だと思いこむ馬鹿が……。カモにしていた奴が最近は来なくなって寂しかったけど、あんたでしばらくは遊べそうだな」


 舞台俳優のようなキザな男が、私に向けて放ったその言葉は、私の理性を失わせるのには充分だった。

 今日はこの男に勝つまで、帰るわけにはいかない。

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