第22話

 (※カールトン視点)


 ジョエルから持ち掛けられた話を最初に聞いた時は、本当に驚いた。


 しかし、私は彼の話に飛びついた。

 病院の経営状況は最悪だったし、あと数か月で潰れることは目に見えていた。

 そんな私にとって、彼から持ち掛けられた話は魅力的だった。

 良心が痛まなかったわけではないが、私は彼の話に乗った。


 そうして私は、難病を治せる医者にのだ。


 それからは、病院は潰れるどころか、大儲けだった。

 私の給料も上がり、生活水準が大幅にアップした。

 そういえば、彼に最初に話を持ち掛けられた時、ギャンブルはしないのかと聞かれた。

 詳しく聞いていないので、どういう事情でそんな質問をしたのかはわからない。

 私はその質問に、神に誓って、ギャンブルに手を出したことはない、と答えた。

 もちろん、本当のことである。


 そんな私は現在、ポーカーで大勝ちしていた。


 今日は、かなり儲けることができた。

 神に感謝だ。

 

 え?

 ジョエルに嘘をついているじゃないかって?

 そんなことはない。


 私は彼に、ギャンブルに手を出したことはない、と答えたのだ。

 その時点では、本当にギャンブルなんてやったことはなかった。

 だから、嘘ではない。


 しかしその後、難病を治せる医者となった私は、大金を手にするようになった。

 いつもは安い酒を買って、家で一人寂しく飲んでいたが、今日の私は違った。

 雰囲気の素晴らしいバーで高級なワインを飲んでいると、偶然にも、数年ぶりに旧友に再会した。

 彼は一人寂しくバーに来ていたが、私も同じなので人のことは言えない。

 そんな彼とは、昔話に花が咲き、楽しい時間を過ごした。


 そして、昔話にも一息ついたところで、彼からギャンブル場へ行かないかと誘われた。

 普段なら、絶対にそんなところへは行かないのだが、酔っていたし、旧友からの誘いを無下にするわけにもいかなかった。

 そして何より、私は一度ギャンブルがやってみたかったのだ。


 あんなものは、金の無駄遣いだと、今までは思っていた。

 しかし今は大金を手にするようになって、べつに負けてもいいから、楽しそうだし、一度くらいはやってみたいものだ、と思っていた。

 そんなところへ、友人からの誘いである。

 断る理由が、私にはなかった。


 そして、ポーカーで大勝ちである。


 友人と出会っていなければ、私は一人で怖気づいて、ギャンブル場には来なかっただろう。

 誘ってくれた彼には感謝しかない。

 彼のおかげで、こんなにも楽しい気分を味わうことができている。


 こんなに楽しい遊びがあったなんて……、これはもう、毎日やるしかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る