第21話

 (※ジョエル視点)


 ゲイブが死んでから、三か月が経過した。


 彼の捜査はまだ続いているようだが、自殺ということで処理されそうだった。

 そして私はというと、新たな病院の経営をしていた。

 その病院は、経営状況がかなり悪かったが、私が経営を始めてから持ち直した。

 それどころか、かなり儲かっていた。

 なぜなら、ゲイブの病院に通っていたほとんどの人が、新しく経営を始めた病院に来ているからだ。

 

 単に経営者が同じだから、というわけではない。

 そもそも、利用者は経営者のことなど気にしない。

 彼らがこの病院に通うのは、院長の腕が素晴らしいからだ。

 院長の名はカールトンといって、難病を治せる医者である。

 彼がいるから、難病を治療を必要としている人は、この病院へやってくる。


 私はそのおかげで、儲けることができるというわけだ。

 ゲイブのせいで失ってしまった金額を、儲けは既に上回っている。

 これで、私の生活は安泰だ。


 もちろん、これには秘密がある。


 カールトンはただの医者だった。

 それを私が、

 彼は、ゲイブとは違う。

 秘密を漏らすようなことはない。

 彼は経営状況が危うい病院を立て直すことができて、私に感謝していた。


 彼はいたってまじめな人間だ。

 いや、難病を治せる医者になると承諾した時点で、真面目ではないかもしれない。

 しかし少なくとも、ゲイブのような人間ではない。

 秘密を共有しているが、彼は脅してくるような真似はしない。

 

 念のために、ギャンブルはやっていないかと尋ねた。

 すると彼は、神に誓って、ギャンブルに手を出したことはないと言っていた。

 信心深い彼のことだから、絶対に嘘ではない。

 だから、ゲイブの時のようなトラブルは起こらない。


 事件も自殺で処理されそうだし、安定して大金を得ることができるようにもなった。

 これで、私の生活も元通りだ。


 そう思っていたが、後にそれが勘違いだったと気付くのだった。

 

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