第20話

 (※ジョエル視点)


 ゲイブが死んでから、一週間ほどが過ぎた。


 私はショックから、多少は立ち直っていた。

 しかし、完全に立ち直ったわけではない。

 もう、あの時の私には、戻れない。


 手には、まだロープを握っている感触が残っているような気がした。


 もちろん気のせいだが、あの時の光景を、私は何度も夢で見る。

 苦しむ彼の姿。

 必死になって、手に力を込めていた私。

 本当に夢ならばよかったのだが、残念ながらあれは現実である。


 私が、ゲイブを殺したのだ。

  

 仕方がなかった。

 そうしなければ、私の立場が危なくなっていた。

 彼は私の秘密を、ばらそうとしたのだ。

 それだけは、どうしても許せなかった。

 そんなことをすれば、私は破滅していた。

 そして、それを防ぐには、ああするしかなかったのだ……。


 まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかった。

 しかし、受け入れなければならない。

 これは、まぎれもない現実なのだ。

 幸い、憲兵は私のことを疑っていない。

 彼の自殺だと思っている。


 まあ、そのためにわざわざロープを用意して偽装したのだから、そう思ってくれないと困る。

 とりあえず、うまくいったようだ。

 これで、秘密を洩らされる心配もないので、私の立場は安泰だし、犯人だとバレる心配もない。

 しかし、一つだけ問題があった。


 私にも、生活がある。

 そして、そのためには当然だが、金が要る。

 今までは難病を治せる医者がいる病院を経営していたが、彼はもういない。

 難病を治せる医者は、もういないのだ。

 しかし、それではあの病院に客は来ない。

 こうなったら仕方がない。


 ほかの病院の経営権を手に入れて、そこの病院の院長を、


 実はすでに、めぼしい人間に目をつけている。

 あとは、相手次第だ。

 経営状況はかなり悪い病院だから、おそらくうまくいくはずだ。


 私はさっそく、その人物がいる病院へ向かった。

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