第14話

 (※ゲイブ視点)


 結論からいえば、私は負けた。


 俳優気取りの若造に、いいようにカモにされた。


「そ、そんな……、馬鹿な……」


 私は、どうしてこんな若造一人に、いいようにやられてしまったんだ……。

 最初は、勝てると思っていた。 

 奴の演技は、見破ったと思っていた。

 しかし、奴は私が見破ることを看破し、裏をかいてきた。

 奴の浅はかな考えなどお見通しだと思っていたが、浅はかだったのは、この私自身だった。


「残念でしたね。借金までして僕と勝負したのに、結局負けてしまうなんて……」


 奴はにやにやと笑いながらこちらを見ている。

 悔しいが、完敗だ。

 奴の言う通り、私は借金をして奴に勝負を挑んだ。

 しかし、それでも勝つことはできなかった。

 圧倒的な実力差を見せつけられる結果に終わってしまった。


 だが、それは今日だけに限った話だ。


 次は、必ず私が勝つ。

 そろそろ、奴の癖も読めてきたころだ。

 今度こそ、だまされない。

 次にやれば、絶対に勝つ自信があった。


 問題は、次の勝負ができないことだ。


 さすがに借金をするのにも限りがある。

 現在の借金を返さなければ、勝負の場に立つことすらできない。

 しかし、調子に乗っている目の目の若造を、私はどうしても負かしたかった。

 完膚なきまでに叩き潰し、屈辱を与えたかった。

 それにはまず、借金を返さなければならない。


 そして、幸い私には、借金を返せる目処がる。

 明日、彼に頼むことにしよう。


     *


 (※ジョエル視点)


 また、ゲイブに呼び出された。


 私はそれに応じるべく、彼のいる病院へ向かっていた。

 その道中、彼が呼びだした理由を私は考えていた。

 可能性は、二つある。


 一つ目は、この前私が貸した金を、返してくれるというものだ。

 まあ、返してくれるとしたら、どうせギャンブルで勝って得た金だろう。

 またギャンブルをしたことは看過できないが、それでも、金を返してくれるだけ、まだマシだ。


 そして、二つ目の可能性。

 こっちは、最悪の可能性だ。

 それは、さらに借金を背負ってしまっている場合。

 もちろんそうだったら、私にまた金を借りるつもりでいるに違いない。

 それは、最悪の展開だった。


 いったい、どっちだろう……。


 私は病院へ着き、彼の部屋へ行った。

 彼は、申し訳なさそうな表情をしていた。


「いやあ、すいませんね、呼び出して。実は、あなたにお願いがあるんですよ。お恥ずかしいのですが、また借金ができてしまって。その、またお金を貸していただくことはできないでしょうか?」


 答えは、最悪の方だった。

 また、金を貸せだと!?

 このままではだめだ。

 何か、手を打たなければならない。

 

 思い付いた方法は、自分でも恐ろしくて、震えてしまうものだった……。

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