第15話

 (※ジョエル視点)


「また金を貸せだと? 貴様、いったい何を考えている? どうしてまた、借金なんて作ってしまったんだ!?」


 私は彼に問い詰めた。

 しかし、その答えなど、わかりきっていた。


「申し訳ありません。実は、あなたから借りた金を返そうとして、ギャンブルをしたのですが、負けてしまって、逆にさらに借金を背負う羽目になってしまいまして……」


 やはり、そうだったか。

 彼はまた、ギャンブルをしたのか……。


「いいか? ギャンブルはするなといっただろう!? もう、貴様には、金を貸すつもりはない」


「そんな……。しかし、いいんですか? 私は、あなたの弱みを握っているんですよ? 病院の秘密を、ばらしてもいいんですか?」


 くそっ!

 やはり、そうきたか……。

 こいつは、どこまでクズなんだ。

 そう言われたら、私には金を貸す以外の選択肢はない。

 あの秘密を洩らされるのだけは、絶対にダメだ。


「わかった。金は用意する。だが、いいか? もう絶対にギャンブルはするなよ。私に早く金を返そうだなんて思わなくていいから、ギャンブルだけは絶対にするなよ」


「ええ、わかりました。本当に、ありがとうございます」


 彼は笑顔になっていた。

 ふざけやがって……。

 この私が利用されるなんて、かなりの屈辱だ。

 これ以上、彼から搾り取られる前に、何とか手を打たなければならない。


 頭に浮かんでいる方法はあるが、それを実行するには、あまりにリスクが大きかった。


     *


 (※バレリー視点)


 ジョエルが帰ってきた。


 またどこかへ、コソコソと出掛けていたようだけど、私にはお見通しである。

 彼の顔色は、かなり悪くなっていた。

 彼が一体どういう状況なのか、私には察しがついていた。


 おそらく彼は、浮気をしている。

 そして、どうして浮気をしているのに、顔色が悪くなっているかというと、浮気相手に脅されたからだ。

 浮気をばらすと脅され、金銭を要求されているのだろう。

 だから、コソコソと出掛けて、それから帰ってくるといつも、あんなに顔色が悪いのだ。

 私の観察力と推理力があれば、それくらいはお見通しである。

 まったく、いい様だわ。


 次に彼が出かける時は、こっそりと尾行しよう。

 そして、浮気の証拠をつかみ、彼に慰謝料を請求しよう。


 次に彼がコソコソと出掛ける時を、私は楽しみに待っていた。

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