第13話

 (※ゲイブ視点)


 明らかに、俳優気取りの若造は、いい手が揃っている顔をしている。

 しかし、その手には乗らない。

 何度も同じ手にかかると思うなよ。


「コール」


 どうせ、その顔は演技なんだろう?

 本当は、弱い手なんだろう?

 まったく、なめられたものだ。

 私に何度も同じ手が通用すると思うなよ。


「レイズ」


 おいおい、そんなことして大丈夫か?

 いかにもいい手が揃っている顔をしてレイズすれば、私が降りるとでも思っているのか?

 お前のその顔が演技だということはわかっている。

 本当は弱い手だということはお見通しだ。


「コール」


 私は手札を開示した。

 ツーペアだが、悪くはない。

 奴は演技して誤魔化そうと思っていたくらいだから、よほど悪い手なのだろう。

 まあ、どうせブタか、よくてもワンペアといったところか。

 奴も、手札を開示した。


「フルハウス」


「……は?」


 いったい、どうなっている……。

 お前は、この前のように、演技をして私を騙そうとしていたのではないのか?

 強い手があるのは演技で、本当は弱い手だったのではないのか?

 それが……、フルハウスだと!?


「もしかして、僕がいい手をそろえているような顔をしていたのが、演技だと思いました?」


 俳優気取りの若造は、にやにやと笑いながらこちらを見ている。

 まさか!

 まさか……、奴は私が演技を見破ることをさらに看破して、あえてわかりやすく、私に表情を悟らせたのか?

 そして私は、まんまと奴のその罠に、かかってしまったというのか?


 だめだ、勝てる気がしない。

 悔しいが、奴の方が何枚も上手だ。

 ……いや、私は諦めない。

 このまま奴にあんなに馬鹿にされたまま、終わることなんてできない。

 最悪借金をしてでも、勝負を続けてやる。

 負けることはないはずだが、まあ、もし万が一負けて借金を背負ったとしても、問題ない。


 借金をしても、彼に金を借りればいいだけなのだから……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る