第12話

 (※ゲイブ視点)


 私はポーカーの主催者に、金を返しに来ていた。


 何とか金が用意できて、本当によかった。

 用意できなければ、私は消されていただろう。

 私はこの前、借金を返しに来た時のことを思い出していた。

 

 あの時は、最後だから少しやっていくかと誘われて、その誘いに乗ってしまった。

 しかし、完全に負けて借金を背負ってしまった時の気分は最悪だった。

 正直、生きた心地がしなかった。

 もう、あんな思いはしたくない。


 だから、もし誘われたとしても、今度はその誘いには乗らないと決意していた。

 そうだ、今度こそやめよう。

 賭け事さえしなければ、借金を背負うことにもならないのだ。


「どうも、この前の借金を、返しに来ました」


「おや? 用意できたのですか? それでは確認します」


 主催者は私が渡した金を確認していた。

 そして、その確認を終えると……。


「それで、今日はどうします? やっていきますか?」


 彼は私を誘ってきた。

 しかし、初めから私にはそのつもりはなかった。


「いえ、今日はやめておきます。いや、今日だけではありません。もう、賭け事からは足を洗おうと思います」


 私は自身の決意を伝えた。


「そうですか、それは残念です」


「今まで楽しかったですよ。それでは、私はもう帰ります」


 私はその場を去ろうとした。

 しかし、あいつに出くわしてしまった。


「あれ? 今日はやっていかないんですか?」 


 私に声を掛けてきたのは、この前私から大金を巻き上げた、俳優気取りの若造だった。


「あ、もしかして、もう勝てないと悟りましたか? それなら、賢明な判断だと思いますよ。まあ、ちょうどいいカモがいなくなって、少し寂しいですけどね」


「……なんだと?」


 私は気付けば、テーブルについていた。


「やるに決まっているだろう! 今度こそ、格の違いを見せてやる!」

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