第11話

 (※ジョエル視点)


「わ、わかった……。金は貸す。だから、病院の秘密は暴露しないでくれ」


 私はしかたなく、金を貸すことにした。

 なんて屈辱だ。

 この私が、こんな奴の脅しに屈しなければならないなんて……。


「ははは……、そうですか。貸していただけるのですか! ああ、本当によかった……。借金を返さなければ、私はどうなることかと思っていましたが、よかった……。いやぁ、すいませんね。なんか、脅したみたいになってしまって……」


 彼のニヤニヤとした笑みを見て、私は気が狂いそうになっていた。

 脅したみたいだと?

 明らかに、脅しそのものではないか……。


 しかし、私には、彼の言うことを聞くという選択肢以外はなかった。

 病院の秘密がバレたら、私は終わりである。

 それだけは、絶対にあってはならないことなのだ。


 本当に屈辱だ。

 どうして、私がこんな奴に利用されなければならないんだ……。

 

     *


 (※バレリー視点)


 最近、ジョエルの元気がない。

 

 それとなく理由を聞いてみたけど、彼は何を教えてくれなかった。

 それでも、繰り返し何度か聞いてみたけど、「何でもない」とか「君の気のせいだよ」と言って、はぐらかされた。


 最初はただ彼のことを心配していただけだったのに、段々と彼が怪しく見えてきた。

 彼は何か、私に隠し事をしているの?

 これだけ様子が変なのに、何もないなんてはずがない。

 いったい、何を隠しているの?

 どうして、私には言えないの?

 私は遂に、彼を疑い始めてしまっていた。


 男が女にする隠し事といえば、一つしかない……。 

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