第10話
(※ジョエル視点)
「そうですか……、残念です。お金は、貸していただけないのですね? それなら仕方がありません。この病院の秘密を、世間に暴露します」
「な、何をふざけたことを言っているんだ!」
そんなことをされたら、私は間違いなく破滅だ。
「だいたい、どうして私に借りようとするんだ! ほかの奴に借りればいいだろう!?」
「ほかには、頼れる人がいないんです……」
「何をしょんぼりした顔をしているんだ! 悪いのはお前だぞ! お前がギャンブルをするから、こんなことになっているんだぞ!」
「私は悪くなんてありません! 悪いのは全部、あの俳優気取りの若造だ! どうせ、イカサマをしているに違いない!」
「何を訳の分からないことを言っているんだ!? そもそも、ギャンブルをやらなければいいだけだろう!?」
「そんなの、仕方がないじゃないですか! 勝負の緊張感や、勝った時の快感が忘れられないんですよ!」
「いい加減にしろ! 脅せば私が金を貸すと思うなよ! あの秘密を暴露すれば、破滅するのは私だけではない! 共犯の貴様も破滅するんだぞ! どうせ、暴露するなんて、ハッタリなんだろう!?」
そうだ。
この前は考えもしなかったが、秘密を暴露されれば、こいつも破滅することになるのだ。
だから、こいつが秘密を暴露するはずがない。
こんなのは脅しに見せかけた、ただのハッタリだ。
「あなたは、わかっていませんねぇ。確かに、秘密を暴露すれば、私も破滅するでしょう。しかし、私は既に、破滅寸前なんですよ! 借金を返さないと、どのみち私の人生は終わりです! だから今更、秘密の暴露を恐れる必要なんてないんですよ!」
「なんて奴だ……」
しかし、彼の表情を見ればわかる。
あれは、本気の目だ。
私が金を貸さなかったら、私も道連れにするつもりなんだ。
私は……、どうすればいいんだ?
いったいどうして、こんなことに……。
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