第9話

 (※ゲイブ視点)


「嘘だろう……」


 年季の差を見せてやろうと意気込んで勝負に挑んだが、圧倒的な実力の差を見せつけられた。

 なんだ、こいつ……。

 人の心が読めるみたいだ。

 私の複雑な思考を見透かすなんて、かなりできる奴だ。


 今日のところは負けだ。

 しかし、次こそは負けない。

 

 私が負けたままで、終わると思うなよ……。


     *


 (※ジョエル視点)


 私はゲイブに呼ばれ、病院へ向かっていた。


 いったい、何の用だろう。

 仕事の相談だろうけど、何か重要なことだろうか……。


「どうした? 用というのは何だ?」


 私は彼の部屋に入った。


「あの、実は相談事がありまして……」


「なんだ? 言ってみろ?」


「あの、えっと……」


「どうした、遠慮せず言ってみろ? 設備の交換か? それとも、古い部屋の改装か?」


「あの、実はまた、お金を貸してほしいのです」


「……はあ!?」


 何を言っているんだ、こいつは?

 え……、何なんだ、いったい……。

 えっと……、私の聞き間違いか?

 もしかして、トカゲを刺してほしいのです、と言ったのか?


 トカゲなんてどこにもいないぞ。

 というか、お前が刺せよ。

 医者なんだから、刺し慣れているだろう。

 怖いのか?

 そんなにトカゲが怖いのか?

 

 いや、落ち着け……。

 

 あまりに唐突で、あまりに衝撃だったので、軽くパニックになっていた。

 聞き間違いのはずがない。

 こいつは確かに、お金を貸してほしい、と言ったのだ。


「なぜだ? お金を貸してほしい理由を話せ」


「あの……、実はまたギャンブルをやったんですが、そのせいで、その……」


「……はあ!?」


 え、何をふざけたことを言っているんだ?


 金なら、この前貸してやったばかりだろう。

 お前はギャンブルはもうやらないと、あの時言っただろう。

 だから私も、すべて水に流して許してやったんだぞ。

 あの奇跡的な和解は、いったいなんだったんだ?


 何を普通に約束を破って、ギャンブルに興じているんだ?

 お前は学習能力がないのか?

 自分がなぜ借金を背負ってしまったか、もう忘れたのか?


「断る。貴様に貸す金などない」


 私はきっぱりと断った。

 しかし、彼から返ってきた言葉は……。

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