第7話
(※バレリー視点)
私はお姉さまから奪ったジョエルとの生活を楽しんでいた。
しかし、数日間だけ彼は、少し暗くなっている時があった。
それとなく原因を聞いてみたけれど、彼は「心配ないよ」とか「大したことじゃないよ」と言って、はぐらかしてばかりだった。
私はそれ以上追及しなかった。
それでもし彼に嫌われたら嫌だし、彼が言いたくないのなら、無理に聞く必要もないと思ったからだ。
でも、それももう大丈夫みたいだ。
彼は以前までのような明るさを取り戻し、毎日楽しそうに笑っている。
心配していたけれど、何事もなくてよかった。
何かトラブルに巻き込まれているのかと心配していたけど、杞憂だったようね……。
*
(※ゲイブ視点)
私は病院で、いつものように仕事をしていた。
今日の患者は、これでもう最後だ。
「先生、ありがとうございます! 先生のおかげで、難病が完治しました。本当に、なんとお礼を言っていいのか……」
対面に座っている彼は、涙を流している。
それも当然だ。
治療が困難と言われている病気が、完治したのだから。
「いえ、私はほとんど何もしていません。あなたが根気強く頑張ったから、こうして完治できたのです。私はただ、ほんの少しお手伝いをしただけですよ」
「先生……、あなたは本当に素晴らしい人だ。難病と診断された時は絶望したけど、こうしてまた人生を楽しめるようになって、本当によかったです。先生、ありがとうございました」
「あなたが元気になってよかったです。本当に長い間、よく頑張りました。それでは、お大事に」
「本当に、ありがとうございました」
患者はお礼を言ったあと、去っていった。
それを見届けたあと、私は大きく息を吐いた。
患者に褒められたり、感謝されるというのは、なかなか気分が良いものだ。
患者たちからは高額の治療費をもらえるが、彼らからのお礼や称賛の言葉もまた、心から嬉しいものだった。
なんだか自分が偉くなったような気分が味わえる。
彼らはこの病院の実態を知らないから、お互いにいいことしかない。
「仕事も片付いたし、家に帰るか……」
患者からの言葉をもらえて、今日は気分がいい。
なんだかこのまま家に帰るのも、もったいない気がする。
よし、今日もまた、あそこへ行くか……。
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