第6話

 (※ジョエル視点)


「まあまあ、そんなに怒鳴らないでください。最後だから、少しやっただけですよ。そうしたら、たまたま運がよかったのか、勝つことができましてね。それで、あなたから借りたお金を返済できる額を手に入れたので、こうして返したのです」


「その主催者には、もうギャンブルは最後にすると、きちんと言ったんだな?」


 私は念を押した。

 これ以上、彼がギャンブルをすれば、いずれ破滅することは目に見えている。


「ええ、もちろん。参加は強制ではありませんから、もう、ギャンブルをすることはありません」


「それならいいんだ……」


「あなたには感謝していますよ。もしあの時お金を貸していただけなかったら、私は今頃どうなっていたかわかりません」


「いいんだ、気にするな」


 そもそも私が金を貸したのは、貴様が脅迫をちらつかせてきたせいだろう。

 私が善意で貸したとでも思っているのか?


「それに、この病院のことも感謝していますよ。小さな病院の医者だった私を、難病を治せる医者にのですから。この恩は一生忘れまんよ」


「ああ、ギャンブルはきっぱりやめたのだから、これからは、仕事に専念してくれよ」


「ええ、わかっていますよ。お任せください」


 私は病院をあとにした。

 彼に呼び出された時はどうなることかと思ったが、金を貸してくれという話ではなくて、本当によかった。

 それどころか、貸した金を返してくれた。

 最悪返ってこないことまで覚悟していたから、予想外の展開だ。


 難病を治せる医者にしてくれた、と彼は言った……。


 確かに、その通りだ。

 彼はもともと、小さな病院の医者に過ぎなかった。

 いつ潰れてもおかしくないような病院だったが、私が経営者となってから、彼は難病を治せる医者になった。

 私が、


 それからは、難病を治せる病院として有名になり、それまでと比べて客がかなり増えた。

 客が増えるということはつまり、金が増えるということだ。

 そうして私の経営している病院は、以前とは比べ物にならないほどの利益を出し始めた。


 それこそが、私と彼しか知らない秘密だ。


 まさかそのことを、脅しの材料に使ってくるとは思わなかった。

 しかし、彼の金銭的な問題は解決したので、もうトラブルが起きることもないだろう。

 彼も切羽詰まっていたから、最後の手段として、しかたなく私を脅したのだ。

 今後はもう、このようなことはないはずだ。


 そう思っていたのだが、その私の考えは甘かったと、後に知ることになるのだった……。

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