第17話

 とりあえず、ウォーレンは屋敷から追い出すことができた。

 

 彼は虚ろな目をして不気味な雰囲気を醸し出していた。

 いつか、とんでもないことをするのではないかという心配は確かにある。

 しかし、とりあえず屋敷からは追い出すことができた。


 さて、これで残る邪魔者は、リンダだけである。


 今まで彼女を屋敷から追い出せなかったのは、彼女が周りの人たちから病弱だと思われていたからだ。

 世間では、そんな病弱な彼女を、私が屋敷に迎え入れた、ということになっている。

 まあ、事実その通りなのでけれど、あれはウォーレンに頼まれて渋々そうしただけのこと。

 しかし、私がリンダを屋敷に招いたという事実に変わりはないので、その本人である私が、病弱な彼女を屋敷から放り出すわけにはいかなかったのである。


 そんなことをすれば、世間から非難を浴びることは目に見えていたからだ。

 しかし、今はそうではない。

 リンダが病弱だと信じられていたのは、数日前までの話だ。

 ここ最近彼女は、町中でいろいろとやらかしていた。

 病弱な人間にはありえない行動をして、それを町の人々に見られていたのだ。


 具体的にいえば、蛇にかまれた時に、車椅子から飛び上がって跳ね回ったり、彼女のバックを奪ったひったくり犯を、全力疾走で追い回したりなどである。

 それに加えて、医師の診断によって正式に、病弱ではないと証明された。


 なので、今この町の人々は、リンダが病弱だというのは、彼女のついた嘘なのではないかと噂している。

 確実に不信感を持たれている。

 今なら彼女を屋敷から追い出しても、非難はされないと思う。

 とはいっても、リンダは簡単には屋敷から出て行かないだろう。


 彼女はまだ車椅子に座って、病弱なふりをしている。

 なかなか諦めが悪い。

 庭師のクレイグさんに頼んで、無理やり追い出すこともできるのだけれど、私の招いた問題なのに彼に頼りきりというのも申し訳ないし、スマートではない。


 しかし、彼女を屋敷から追い出す方法は、実は考えてある。


 その方法を実行に移す機会も、もうすぐ訪れる。

 あと数日といったところかしら。

 それまでは、彼女がこの屋敷にいることも容認してもいい。

 でも、その日が来たらあなたは終わりよ、リンダ。


 私はカレンダーをめくるごとに、その日が早く来ないかと待ち遠しく思っていた。

 しかし、焦ることはない。

 これで本当に彼女を屋敷から追い出すことができるのだから、それまでの辛抱だ。


 この方法なら、彼女は自主的に屋敷から出て行くことになる。

 しかも、町の人たちに彼女は非難されることになるでしょうね……。

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