第10話
最近、町で面白い噂を耳にした。
それは、リンダについての噂だった。
彼女はウォーレンと一緒に、新しくできたカフェに行ったそうだ。
しかしそこで、最近よく町に出没しているヘビに出くわしたらしい。
しかも、リンダはその蛇に足をかまれた。
そしてその際、彼女はあまりの痛みに飛び跳ねていたそうだ。
その時の彼女の反応について、その様子をカフェで目撃した人を含め、町の人々は様々な噂をしている。
ある人は見間違いだと言い、ある人は何かの偶然だろうと言っている。
そしてある人は、リンダが病弱だというのは、嘘なのではないかと言っている。
これは面白くなってきたわね。
もちろん、ただの噂だ。
みんなが真面目に議論しているわけではなく、ただの世間話程度。
突き詰めて考えているわけでもなく、まあ、なんとなく、怪しいかもね、くらいの認識である。
だが、それでいい。
今はその程度の疑惑でも、やがてその疑惑は膨らみ、実際に彼女の病弱が嘘だと町の人に知れ渡れば、彼女は破滅する。
町の人も噂しているし、なによりウォーレンが、リンダの飛び跳ねる姿を何度も目撃することに意味がある。
さすがにリンダのことを愛していて、信用している彼だって、何度もそんな場面を見れば、彼女に騙されていることに気付くはず。
そして、彼女に騙されていると知った時、いったい彼はどのような行動に出るのだろう。
それが今から楽しみだった。
本当は、リンダが思わず動き回ってしまうシチュエーションを、私が用意するつもりだったけれど、私がそんなことをするまでもなく、勝手に自滅してくれそうな感じである。
いずれ町の人々の疑惑が高まってきた時、最高のシチュエーションで、彼女の病弱が嘘だと暴露してあげましょう。
実は、その方法だけは考えているのである。
その方法とは──。
*
(※ウォーレン視点)
だめだ、どうしても、あの時の光景が頭をよぎる。
リンダは病弱なのに、どうしてあんなに勢いよく飛び跳ねていたんだ。
あの動きは、病弱な人の動きではない。
彼女はそのことについて説明してくれた。
おれは、その説明で納得した。
しかし、それでもまだ、完全に納得したわけではなかった。
心のどこかで、彼女のことを、本当に信用していいのかと思ってしまっている。
彼女のことを、信じたい。
これは本心だ。
だって、彼女のことを愛しているのだから。
でも、もし、彼女がおれを騙していたとしたら?
その時は……。
いや、こんな暗いことばかり考えていたらダメだ。
気分転換が必要だ。
そうだ、またリンダと一緒に、どこかへ出掛けよう。
彼女へほんの少しの疑惑があるせいで、今日は彼女に接する態度がよそよそしくなってしまった。
彼女も、きっと不安に思っているだろう。
こんな時だからこそ、二人で一緒にどこかへ出掛けて、楽しい思い出を作ろう。
二人の愛は本物だと、確かめ合えばいい。
しかし、二人で出掛けた先で、おれはまたあれを目撃してしまうのだった……。
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