第8話

 (※リンダ視点)


 あれ?

 えっと、ここはどこ?

 私は、何をしていたんだっけ……。


 目覚めた私は、知らない場所にいた。

 そもそも、どうして私は眠っていたのだろう。


 ……思い出した!


 私は、ヘビに噛まれたのだ。

 そして、あまりの激痛に気を失ってしまったのだ。

 ここは、病院だ。

 病院のベッドの上だ。

 状況はおおむね把握した。

 しかし、まだ肝心なことが分かっていない。


 私の検査は、もう終わったの?


 終わっていたとしたら、最悪だ。

 私の病弱が嘘だということがバレてしまうのだから。

 しかし、まだだった場合は、なんとかなる。

 診察を断固拒否すればいいのだ。

 怪しまれるかもしれないが、病弱がバレるよりは何倍もマシである。


 そんなことを考えていると、ちょうど医師が部屋に入ってきた。


「ああ、目が覚めましたか。ちょうど今から検査をしようと思っていたところです。あ、不安な気持ちはわかりますよ。でも、安心してください。あの蛇に毒性がないことは、ヘビを調べてわかっていますから。検査を念のためですよ」


「私の車椅子はどこですか?」


「……え?」


 医師は驚いていた。

 突然すぎただろうか。

 検査がまだだと知って、私は一刻も早くこの病院から抜け出したかったのだ。


「検査は、必要ありません。私はもう帰ります。車椅子に乗せてください」


「え、でも、一応検査をした方が……」


「ヘビに毒性はなかったのでしょう? だったら、検査なんて必要ありません! それとも、無駄に検査を受けさせて、その分お金を搾り取ろうというつもりですか?」


「い、いえ、そんなつもりは……。私はただ、念のために検査をしておいた方がいいかと思っただけで……」


「必要ありません。車椅子に乗せてください。拒否するのなら、患者の意思を無視したと言って、訴えますよ!」


「わ、わかりました! それでは……」


 医師は私を車椅子に乗せた。

 私は、自分で車椅子を押して病院を出た。


 ふう、何とか私の病弱がバレずに済んだわ。

 きっと、日ごろの行いがいいことを、神様が見てくれていたのね。


     *


 (※ウォーレン視点)


 え……、飛び跳ねてた?

 蛇にかまれた時、リンダは飛び跳ねていなかったか?

 じゃあ、彼女が病弱だというのは……。


 いや、そんなことはありえない。

 きっと見間違えだ。

 あの時はリンダのピンチにおれも気が動転していたから、見間違えただけだろう。

 リンダがおれに嘘をつくはずないのだから、そうに違いない。


 ……そうであってくれ。


     *


 (※カフェ店員視点)


 さっきの車椅子のお嬢さん、大丈夫だっただろうか。

 いや、それよりも、あのことには驚いた。

 車椅子に座っている人が、まさかあんなに勢いよく飛び跳ねるなんて……。


 あれは、私の見間違えか?

 たしかあのお嬢さんは、あの屋敷に住まわせてもらっているお嬢さんだ。

 病弱だと聞いていたが、あの飛び跳ねようはいったい……。

 いや、考え過ぎか。

 見間違いに決まっている。


 あの時周りにいた客たちも、今私が思ったことと同じような会話をしている。

 彼女は車いすに座っていたのに、どうしてあんなに勢いよく飛び跳ねることができたのだろうと。

 ある人は見間違いだと言い、ある人は何かの偶然だと言っていた。


 そしてある人は、病弱というのが嘘なのではないかと言っていた……。

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