第7話
(※リンダ視点)
「ヘビ……、まさか、本当に出るなんて……」
私は怖くて動けなかった。
下手に動くと、かまれてしまう可能性がある。
そもそも、下手に動くも何も、私は病弱(設定)なのだから、車椅子から立ち上がって逃げるわけにもいかない。
状況は、最悪だった。
もし、ヘビにかまれたらどうなるだろう。
まず、物凄く痛いだろう。
しかし、痛いかどうかは、この際どうでもいい。
いや、大問題だけれど、ほかのことに比べれば些末な問題だ。
問題は、かまれたあと、どのようになるかだ。
間違いなく、私は病院へ運ばれるだろう。
そうなったら困る。
蛇に毒性があるかはわからない。
しかし、わからないからこそ、検査をする必要が生じる。
そうなった場合、私の病弱が嘘だということまで発覚してしまうだろう。
その展開だけは、避けなければならない。
「お、おい、あそこにいるの、ヘビじゃないか?」
「本当だ! 大変だぞ! あの車椅子の子がかまれそうだ!」
「でも、下手に動かさないほうが、安全なんじゃないか!?」
「そんなこと言っている間に、あの子がかまれたらどうするんだ!?」
「でも、動かしたせいでかまれる可能性だってあるんだぞ!」
周りのテラス席に座っている客や、この店の店員も、今の私の状況に気付いたようだ。
しかし、気付いたところで、彼らが何かできるといったわけではなかった。
むしろ、状況は悪くなったといえる。
たとえば、私がヘビにかまれたとして、物凄い痛みに襲われたとする。
しかし、そんな状況でも私は、激痛に思わず飛び跳ねることも、逃げることも許されないのだ。
だって、私は病弱(設定)なのだから、そんなことをしたら、周りから不審な目で見られてしまう。
それだけは、避けなければならない。
「リンダ、待っていてくれ。おれが、このヘビをうしろから捕まえる」
向かい側に座っているウォーレンがそう言った。
蛇はこちらに向いているので、ウォーレンは後ろから気付かれないままヘビを捕まえることができる。
さすが、頼りになるわ。
私は、彼がうまくヘビを捕まえられることを祈った。
彼が、ゆっくりとうしろから手を伸ばす。
そして、ヘビの近くまで手を近づけると、勢いよく捕らえた。
「やった! 捕まえたぞ!」
しかし、彼が掴んでいるのは、しっぽの部分だった。
身の危険を感じたのか、ただ驚いただけなのかはわからないが、ヘビが急に動き出した。
そして、勢いよく私に迫ってきた。
一瞬のことだったので、まったく反応できなかった。
「いやああ! かまれたわ!」
蛇が私のすねにかぶりついていた。
べつに駄洒落を言いたかったわけではない。
あまりの激痛に、私は気が動転していた。
だから、周りの人たちに見られていることを失念してしまっていたのだ。
あまりの激痛に私は、反射的に飛び跳ねていた……。
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