第4話
洗濯物を洗濯機からかごに移していく。洗濯ネットから出し、しわにならないように伸ばしていく。礼資のジーパンを出したときに違和感があった。溜め息をつく。まただ。なんども、ポケットの中身を出してから洗濯機に服を入れるようにいっているのにまた鍵が入っていた。ポケットティッシュが入っているよりはいい。一番ひどいときはポイントカードらしきものが入っていた。洗濯機の中は紙くずでいっぱいだったし、判別つかなくなったカードは悲惨だった。免許証やパスポートじゃなくて良かったねと笑っていたのが許せなくて、でも彼を怒れなくて、洗濯機の中の紙くずを一つ一つ拾いながら一人で泣いた。
ポケットから出てきたこの鍵はなんの鍵だろう。私はとりあえず自分の部屋着のズボンのポケットにいれた。
洗濯物を干すという作業自体は嫌いじゃない。今日みたいに天気がいい日は特に。日光を浴びるのは健康にいいらしい。歌いながらベランダに出て、洗濯物を広げていく。それほど量があるわけじゃないから、二曲くらいで終わる。
ちょっとゆっくりしたら少し遠目のスーパーにでも行こうか。スーパーに行くのはできるけれど、すぐそこにある洗い物をすることはできない。
自分でも不思議になることがある。すぐ終わらせてしまえば後々楽だと知っている。知っているが、実行できない。
礼資と一緒に住んでいるから大丈夫だけれど、実家にいたときはお風呂には入れなくなるときがあった。同棲を始める前、まだ仕事をしていた頃。仕事から帰ってきて疲れてソファの上から一歩も動けなくなりそのまま眠ってしまう。ふと空腹で目を覚ますと深夜で、泥のような疲れは抜けずカロリーメイトを食べ、缶チューハイを飲み、思い出してメイク落としシートで化粧だけぬぐい、そのまま寝てしまう、そういった生活をしていた。今はまだお風呂に入れる。そういう生活をしていると母からは文句よく言われた。
ただ、今の私は毎日、ピントが合っていないような感覚がある。買い物や家事くらいしか動いていないから体は疲れていないのに、なんだかだるくてすぐ横になりたいと思ってしまう。寝てしまうと今度は眠くてだるくなる。朝はきちんと起きているし日光も浴びているけれど、不健康な感じなのだ。
十分だけと言い訳をして、ベッドに横になる。洗濯かごはベッドの脇に置いた。起きてからまだ数時間しか経ってないのにどうしてもだるい。眠いわけじゃないとわかっているし、実際私は寝付きが悪いから寝るまでに十分はかかってしまう。それなのに十分だけ寝ることなんてできるわけない。ぼんやり横になっていると部屋の中がとても汚く思えてしまう。体質なのか私の髪はすぐ抜けるし掃除しても追いつかないくらいのペースで抜ける。床の上の髪の毛はすごく汚らしく感じる。ゴミ箱の中のティッシュも嫌だ。
止めていないスマホの音楽はずっと鳴り続いている。ミックスリストが日本のポップスと海外のロックをまぜこぜに流していた。
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