第十四話
「あの男独自の仕入れ先……でしょうか?」
「ええ、ローレンは何か知ってる?」
「いいえ、あの男には少額のお金を渡せば勝手にうろついていましたから……どこに行ったかまでは……申し訳ありません」
「いいの、いいの。ダメ元で聞いただけだから」
リージュ家とのお茶会が終わり、家に帰って来た私たちは父の行動を一番知っているであろう人物、ローレンに父の仕入れ先について問いかけていた。
「そのことについては申し訳ありませんが、シェリア様、もう当主となったのです。その言葉使いはいかがなものかと……」
「今は信頼できる人物しかいないからいいの。それよりも、ローレンはあの父親が自分で毒草を採取してくると思う?」
「……はぁ、あの男が自分で…ですか? ないでしょうね。アレは自分に被害があるようなことは絶対にしないでしょう」
「そうだよね」
実際、父の行動はみんなが言っている通りだと思う。どうしてもアーシャ先生を自分の手で殺したい。そんな気持ちを持って自分で採取した。そんな可能性もごく僅かだけど、捨てることはできない。
「この話は終わりにしようか。リージュ公爵も捜査してくれるみたいだし、この件はこれで終わり!」
「……リージュ公爵は信用できそうだったのですか?」
「うん。使用人を含め全員を信じてるって毒味を買って出たぐらいだし、信用できると思う。それに、あの公爵夫人はお母様と同じ感じがしたから余計に大丈夫だと思う」
「そうですか……」
お姉様の言う通り、ルイーザ公爵夫人はアーシャ先生と同じ先を見ていると言えばいいのか、こちらを見透かされているように感じてしまう。実際に私が考えていたお茶会の意図も読まれていましたし……
だからこそ、ルイーザ公爵夫人は毒殺のようにコソコソしなくても、貴族としてのやり方で堂々とアーシャ先生とやりあえる人だと思う。
ローレンとのやりとりが終わり、それぞれの部屋に戻るために廊下を歩いているとお姉様が急に立ち止まる。
「アリシアは良かったの?」
「……良かったとは?」
「毒草を用意した犯人を突き止めたいんじゃなかったの? それなのに私は終わりにしてしまった。それで、アリシアは不満じゃないの?」
「いいえ、元々あまり気にはしていなかったのです。ですが、公爵家の連絡の時期が良過ぎた為に疑ってしまっただけで……」
そして、一度疑ってしまうと余計に背景が気になってしまった。父の手助けをした者がいるかもしれないということに心がざわつく。けれど――
「気になるのは確かです。ですが、手がかりも何も……ない」
「どうしたの?」
手がかりは確かにありません。だって、起こったことは全て過去であり、その過去を知っている人はここにはいないのですから。ですが、牢屋にならいるじゃないですか。事実を全て知っている人が。
「いえ、こんな風に行動を読めない人の考えを暴くよりも本人に直接聞けば答えてくれるのではないかと思っただけです」
「本人にって、あれが答えると思う?」
「答えたら釈放の時期を早めることを考える。こう言えば喜んで答えてくれるんじゃないですか?」
「アリシアはあの父親のことになると適当だね。そんなことでこんな大事なことを話すわけないじゃん」
「まあ、そうですよね。ごめんなさい。忘れてください」
それからまた二人でしばらく廊下を歩く。
「じゃあ、お休みアリシア」
「はい。お休みなさいお姉様」
お互いに挨拶を終えて、部屋に戻る。あながち間違ってもいないような気がするのですけどね。あの父ならペラペラ喋りそうですし……
一度、リオン様に聞いてもいいかもしれませんね。
そこまで考えてからベッドに潜り込む。そのまま瞳を閉じるとスッと眠りに落ちていった。
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