ミラ視点2

 テストの成績が発表されていると聞いて、廊下に急いで向かう。ゲームでは自動的に順位が確認することができたため、こんな古典的な方法で発表されるとは思っていなかった。


 この順位表は私にとって大きな意味がある。これはリオン様とのイベントに必要不可欠なのだ。リオン様は王位を継ぐつもりはない。そのためテストでは手を抜き、十位になるように計算しているのだが、そこにイレギュラーが入る。そう私だ。私が十位を取ることでリオン様は十一位になる。そして、自分の計算をずらした私と言う存在に興味を持つようになるのだ。そして、リオン様のとる点数はどれだけゲームをやり直しても500満点中、400点ピッタシ。だから、私はそれよりも少し上の点数を取ればいい。そのはずだったのに……


 アリシアが満点、そして、リオン様もなぜか二位と高得点をとっている。どうして!? 確かにゲーム終盤、リオン様が本気になった後のテストは全教科満点に近い点数を叩き出していた。今はその状況に近いということ!? それなら本気を出させているのはアリシアってこと!?


「アリシアーー!!」


 思わず叫んでしまう。だけど仕方ないことでしょ。そもそも、この時期にアリシアがいること自体がイレギュラーなのよ。本来のゲーム通りならアリシアが入学してくるのは次の年のはずなのだ。アリシアが入学してくる一年の間に、学力や出会いイベントなどの下準備をし、二年目から本格的に乙女ゲームとして始まる。

 そのはずなのに、なぜかアリシアは一年目からいる。そして、姉であるシェリアをいじめていないという。そのせいで、イベントが全部変わってしまっている。


「このままじゃ、アリシアに全部イベントを持っていかれちゃう!」


 どうしてそうなってしまったのか。それはシェリアが転生者だというが、それだけではないと思う。たとえシェリアが転生者だとしても、今のアリシアの行動はおかしすぎる。それに、成績もアリシアが入学してきたところで、下の上ぐらいだったはず、それが一位にいるなんてありえない。

 これらから推測できることは一つ。アリシアは転生者であり、そのことを隠している!


 でも、今のままではまずいのも確か。このままでは私はリオン様の記憶にも残っていない。リオン様のイベントを十分進めてから、レオスも進めようと思っていたのに、どちらも手をつけれていない。


 こうなったら一つしか方法はない。ストーリーをもとに戻す。そのために、アリシアには退場してもらわないと……


 ここは貴族社会。アリシアが元平民だと知れば、嫌がる人もいるはず。そいつに罪を被ってもらいながら、私も手を出す。もしくは私に手を出させるのもいいわね。

 理由は……そうね。元平民である自分と元から貴族である私との格の違いに嫉妬し、手を出してきた。ありきたりだけど、それだけ行われているという証拠よね。


「待ってなさい、アリシア! 私が元のストーリーに戻してやるんだから。少し早くなるけど、盛大にザマァされなさい!」


 そして、アリシアを追い出した暁には、ようやくリオン様とお近づきすることができる。今まで邪魔してくれた分、絶対に、ぜーたいに辛い目に合わせてやるんだから!


「あの人でしょ? 入学式に叫びながら走り回っていた人って。今も叫んでいるし、呼ばれている方はかわいそうよね」


「そうそう。ここは貴族が通う学園なのにね。恥ずかしくないのかしら?」


 今日もうるさい。リオン様とのちゃんとしたイベントを起こせなかった日から、私は今みたいに陰口を叩かれている。この世界は私を中心に回っているというのに。

 たぶん、今はイベント通りに行っていないからバグみたいなものが起きているのだろう。出なきゃ、この私に悪口を言ってくるはずがない。だから、これはストーリーが戻るまでの我慢。

 だけど私の悪口を言うなんて、後で痛い目に遭うんだから。ストーリーが戻ったら覚悟しておくことね。アリシアの次はあなたたちを貶めてやるんだから。

 

 私は悪口を言っている二人組の顔を覚えて、教室に戻る。悪役令嬢アリシアを追い出す作戦を考えなきゃ!

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