第六話
ルーシア・リージュ様。初めて会った、というよりは見かけたのはリリア様に話しかけられた時。お姉様がリリア様に対して友好的に接している姿を驚くように見ていたのを見たのが初めてだった。
その後、教室に入ってすぐに自己紹介が行われまひた。そこで初めて声を聞いたのですが、彼女が話したことは未だに忘れられません。
「リージュ公爵が娘、ルーシアですわ。皆様、よろしくお願いしますと言いたいところですが、……一人、このクラスにふさわしくない人がいると思っています」
私のことでしょう。その時はそう思いました。だって、いわゆる下級貴族といわれるような下位の貴族は平民上がりの私を受け入れるのは容易いでしょうが、彼女のような高位貴族は受け入れづらいのはわかっていたことですから。
こうなることはなんとなくわかってはいました。だからこそ、ここは謝ってこれからは出来るだけ関わらないようにしよう。
「――わかっているのでしょう? リリア・フローネ!」
「……えっ?」
私……じゃない? それにどうしてリリア様が? それは当然、言われた彼女も思うわけで……
「あ、あの……どうして私が……」
「わからないのですか? それなら教えて差し上げましょう。貴方は! 亡き才姫、アリーシャ様の形見であるシェリア様と、アリーシャ様がお認めになったアリシア様のお二人に話しかけるなど!」
私は平民です。ですが、父親はお姉様と同じ人物であり、母親がメイドのいわゆる不貞の子供です。ですが、私はアリーシャ様に勉強を教えてもらい、その実力を買ってもらっていました。
ですが、彼女がどうしてそのことでリリア様にここまで言うのかわかりません。
「貴族であるならば、位の低い者から声をかけるなどありえませんわ! ましてや、アリシア様に聞かれるまで名乗りもしないで!」
えっと……もしかして、リージュ様はリリア様が名乗りもせず、私たちに話しかけたことに怒ってる?
「そっ、それは……申し訳ありませんでした」
「私にではありませんわ! 謝るべきは他にいるでしょう!」
「……っ、シェリア様、アリシア様、無礼な真似をしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
私は別にいいのですが、ここは謝罪を受け取らないと角が立ちますし、お姉様は黙っているので、私が答えれば問題はないでしょう。
「いえ、気にしていませんので、だいじょう「いらないわ!」……お姉様?」
「謝罪はいらない。結局リリアちゃんは名乗っているのだし、問題ない! それにここは学園。貴族のしがらみを忘れて、みんな仲良くすればいいじゃない。そんな堅苦しいのは私、嫌いだわ」
お姉様!? お姉様の気持ちはわかるのですが、タイミングが最悪です。後でコッソリとリリア様にだけ言えばいいじゃないですか! ほらっ、リージュ様がショックを受けて、今にも倒れそうなほど顔を青くしているではありませんか!
「も、もうしわけ「お母様もきっとそう言っていたと思うわ」…………」
ルーシア様がこの世の終わりみたいな顔をしている。言っていることは何も間違っていないのに……。確かにアリーシャ様はそう言うと思いますけど……。仕方ありません。
「お姉様、リージュ様の言っていることは間違いではありません。たとえ学園の中と言えど礼儀は礼儀です。それに…責めるつもりはありませんが、リリア様も貴族の規則に従って私ではなく、お姉様に声をかけましたよね? それと同じことをリージュ様は指摘しただけです。なので、リージュ様に堅苦しいというのはやめてください。リージュ様、申し訳ありません」
「アリシアさま〜」
リージュ様は今にも泣きそうな顔をしている。私たちを思って注意してくださったのに、お姉様がごめんなさい。
「それでもアリシア。あの言い方は…」
「リージュ様は貴族としての規則を満たしていなかったと言っているだけです。確かに、言い方はきついとは思いましたが、それを言うならお姉様も同じです。リージュ様を見てください。彼女はあくまで規則を言っただけです。お姉様の言い分も確かだと思いますが、ここは将来のために学ぶ場所です。みんな仲良くもいいと思いますが、彼女の言っていた通り規則を学ぶ場所であることも忘れないでください」
「う〜、ごめんなさい」
「リージュ様には?」
「リージュ様もごめんなさい。言いすぎたわ」
「い、いえっ、私の方こそ申し訳ありませんでした。それに、フローネ様も言いすぎましたわ。申し訳ありません」
はあ、これでわだかまりは無くなったでしょうか。
「お、終わりましたか〜」
担任の先生が恐る恐る声をかけてくる。リージュ様から始まった言い合いですが、あくまで学園内。リージュ様も生徒なのですから、止めてくださればいいのに……
無理ですよね。はい。これからこの役割が私に回ってきそうなのですが、少しは王族であるリオン様が引き受けてくれないかな……はあ。
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