第五話
学園に入学してから数ヶ月、初めてのテストが行われた。
授業内容はそれほど難しくはなかった。いえ、簡単すぎたと言うべきでしょうか。正直に言えば、授業を受ける意味は見出せませんでした。
学園の役割について少し思い悩んでいた時、お姉様は「学校は友達とおしゃべりしたり、遊んだりするところだよ」と言っていましたが、貴族としてそれはどうなのでしょうか……?
人脈作りの事ということであっているのでしょうか?
そんな私にとってやはり学園のテストは簡単でした。それに……お姉様との歳が一つ離れている私のためにリオン様が用意してくれた飛び級できるかを測るテストの方が何倍も難しかったような気がします。
「やっぱり、アリシアは賢いな〜」
「ああ、全教科満点か……。これは、私もまだまだ努力しないといけないな」
廊下に張り出された順位表を見ながら、お姉様とリオン様がそんな事を言って来るのですが、リオン様は二位、お姉様は三位なのですから、十分だと思うのですけどね。
そんな二人を余所に順位表に穴が開きそうなぐらい凝視している人が一人……
「リリア様、そんなに見ていても順位は変わりませんよ?」
私が声をかけるとこちらを見るリリア様。ですが、リリア様がこちらを見る際、ギギギと音が鳴っているように聞こえたのですが、幻聴……ですよね?
「アリシア様、これは現実でしょうか? 私が四位だなんて……何かの間違えなんじゃ……」
「間違えじゃありませんよ。リリア様の努力の結果です」
「そうですわ! 私を差し置いて四位にいるのですから自信を持っていてくださいまし。そして、次は私がその場所を頂きますわ!」
オホホと高笑いをする彼女。顔の両サイドに金色の髪を縦ロールにして揺らす彼女はビシッとリリア様に指を指す。
「はい! 次も負けませんから、ルーシア様!」
「それでいいですわ! それでこそ私の宿敵ですわ!」
彼女はルーシア・リージュ様。リージュ公爵家の一人娘で、第四王子の婚約者様。そして、この学園に入学した時に、お姉様を信じられない者を見るように見ていた人物でもある。まあ、それは私の勘違いだったのですけれど……
もう一度、廊下に張り出された順位表を確認する。そこにはクラスと名前、そしてテストの点数が上から順に並んでおり、私の名前は一番右に書かれている。そして、その横にリオン様、お姉様と続き、上位30名はすべて一の組が独占している。
この状況は、この学園設立以来初めてのことらしい。クラス分けを成績順では行っていないため、ここまで成績が顕著に現れる事がなかったそうです。
そして、ミラという少女の順位は31位。これはまた面倒なことになりそうな予感が……
そう思った瞬間に、体全体に悪寒が走る。すぐにこの場から離れなければいけない。そんな気がする。そんな私に気づいたのか、リオン様が私の肩に手を掛ける。
「さあ、ここにずっといるのも、まだ順位を見れていない人の邪魔になるし、教室に戻ろうか」
リオン様の掛け声で、集まっていた人だかりはたちまち少なくなり、また別のグループが成績表の前に集まる。その中に、チラリとピンクの髪が見えた……ような気がした。
「アリシアーー!!」
廊下に響き渡る彼女の声に、やっぱり居たんだと確信する。どうして私の名前を叫ぶのでしょうか。本当にやめてほしい。
「ふふっ、人気だな」
「……リオン様、揶揄わないでください。ただの迷惑な人じゃないですか」
「私がお父様に頼んで、なんとかしましょうか?」
ルーシア様が物騒な事を言うけれど、私の平穏のために頼んでもいいんじゃないかなとも思ってしまう。はあ…
「ありがとうございます。ルーシア様。……何かあれば頼らせてもらいます」
「絶対ですわよ!」
真剣な目で私を見るルーシア様に頷く。ほんと、貴族と聞いて警戒だけしていた過去が馬鹿馬鹿しくなるくらい、とても良くしてもらっている。彼女たちなら本当の事を言っても受け入れられそうだなと思う。言うつもりはないですけどね。
ルーシア様の第一印象は、私がイメージしていた貴族令嬢そのままの人だった。
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