ミラ視点

 失敗した。失敗した。失敗した。


 今日はリオン様との初対面のイベントだったのに、イレギュラーのせいで、イベントを達成できなかった。せっかく早起きして、イベント場所で待っていたのに、いるはずがない人物に思わず声をかけてしまった。


 アリシア……この世界の悪役令嬢である彼女は私よりも一つ年下で、今日学園に来ているはずがなかった人物。だから、彼女が私と同じ転生者だと思ったのに、彼女の姉である小説ではヒロインだったシェリアが転生者だという。それなら、どうやったらあの姉のものは全て私のものといった暴君の権化のような人物がその対象と仲良く手を繋ぐような関係になるというのか。


 この世界は私中心に回っている。何故なら私、ミラ・レーソンが存在しているから。この世界はシェリアがヒロインの小説ではなく、私をヒロインとした乙女ゲームの世界だ。この乙女ゲーム、「なるべくリアルな異世界でザマァを」は小説を元に作られた乙女ゲームである。このゲームはタイトル通り、作者の妙なリアル思考によって、微妙にリアルに作られている。

 例えば、出てくる攻略キャラの中で一番位が高いのは第四王子だ。これはヒロインがもし第一王子と結婚したとしてその後、国母が務まるわけないだろうという理由だ。そのため異世界なのに、設定が妙にリアル思考なのが採用されているのがこのゲームの特徴だ。

 そして、ザマァの対象は小説と同様にアリシアである。小説ではシェリアが直々に叩き潰したが、ゲームではミラによってザマァをされる。何故ミラが? というのは、ミラと攻略対象との関係が良くなることの嫉妬だ。アリシアは自分よりも下の地位のものが自分が持っていない良いものを持つのをよしとしなかった。そのため、ミラにもザマァされる話になっていた。


 このことを思い出したのは、私がレーソン男爵家に引き取られ、全身が映る鏡を見た時。私はこの世界の中心人物であると確信した。そして、神様に感謝した。わかってんじゃんと。だって、シェリアに転生していたらアリシアにいじめられ続けるのだ。そんなものに耐えられる自信はないし、私のように、ミラに転生している人物がいれば、物語はミラ中心になってしまう。そうなってしまえば、シェリアはただのミラのお友達ポジになってしまう。そんなのは許されない。だって、私はこの世界に来てある目的があるから。


 全ては第五王子であるリオン様と一緒になるために。


 別に王族だからというわけではない。ただ攻略するなら位がよく、人柄がいい方が後に楽に決まっているから。だから別に逆ハールートを狙っているわけじゃないから許して欲しい。その話を転生者なら話そうと思ったのに、予想外に予想外が重なって、出会いイベントを逃してしまった。


 過ぎてしまったことは仕方ない。一応、名前は名乗ったので、知らない人ではなくなったはず。

 だから、これから別のイベントで好感度を上げていけばいい。そして、もう一人探さないといけない人物がいる。シェリアの婚約者である、レオス・エヴァンス。逆ハーは狙っていないが、レオスはかわいそうなので、入れてあげてもいいと思っている。

 だって、彼はシェリアを守るために、シェリアを学園に行かせるためにアリシアの婚約者になったのに、シェリアは傷ついた心を学園で出会った攻略対象の誰かに埋めてもらって、レオスの存在は気にしなくなる。そんな可哀想な彼を拾ってあげるのは優しさでしょう?


 だから、私はこの世界でリオン様とレオスだけしか狙わないわ。なんだったらアリシアのザマァをしないであげていいわ。だから、私の邪魔はしないでよね。

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