◆ 10・彼の思惑(前) ◆


「どういう意味よ?」


 ルーファは溜息をつく。


「そのまんまだ。アイツの狙いは別にある」



 狙い? 狙いですって?? アレックスにはライラ達にしたような説明してないのよ? そんな状態で一体どんなプランがあるっていうのよ。

 プランがあっての行動だというなら、そのプランをこそ明かすべきよ。



 荒れ狂う心を知ってか知らずか、ルーファが確認するように問いかける。


「チャーリー、お前って基本が行き当たりばったりだよな? 今のところ乱立してんだよな、お前のやる事は。まぁ第一に具体性のない悪役になるって事。第二に悪魔を天界に引き込む手筈。第三に、手つかずの勇者と魔王捜し」

「ゆ、勇者と魔王は見つかってるようなもんよ。あの第一王子のアレックスと第二王子のヴィンセントでしょ」

「確定か?」

「……それは、まぁフローレンス次第というか。覚醒するかどうか次第で……」


 確定情報かと言われれば、自信はない。ルーファの問題点についても、悪魔を天界にという事で、悪役として確立されると思っていた。何より、次から次へと問題が降りかかり、細かい所まで考えを詰める暇もなかった。



 ダメなの??



「王子は、お前の様子が可笑しい事に気づいてたぞ」


 この場合の王子はアレックスだろう。


「アレックスが、何に気づいたっていうの? まさかライラみたいにリスタートを察知してたって?」

「そこは分かんねぇな。だが、かなり正確に天獄について調べてたし、お前の事も見張ってたぞ」



 見張って……。



 実に彼らしいと思った。

 過去の時間軸でも何度かあった事だ。細かな所まで目が届く男は、あらゆる事を把握したいのだ。理由も分かっている。先回りして悪い事を遠ざける為で、それは守る行為でもあった。



 ただ、金と権力があるだけに……とんでもない付きまといレベルになるのよね。



 一見、無害そうなカエル顔をしているだけに、当時は衝撃も大きかった。驚きのあまり逃亡した事もある。

 もっとも、すぐに捕らえられたし、幽閉レベルで保護される事となった。

 あれらも懐かしい思い出の一つだ。



 って事は、この『喰われた』っていうのも、カエル的には色々な事象を総合判断してってやつか?



「ルーファ、カエルは最後に何て言ってた?」


 ルーファは口元に人差し指を当てる。


「内緒、に決まってんだろ」


 片目を瞑るルーファ。

 彼は自分の顔の良さを売りにして、一々芝居がかった動作を似合うと思っている節がある。否定はしないが、こういう場面でされれば、腹も立つ。


「クソヤロウ」


 するりと出た暴言にさえ、余裕の笑みを浮かべる。



 未来の夫の最期の言葉だぞ? 救いとして話しても話しても罰は当たらないだろう? こっちは、ほぼ未亡人だぞ?



 苛立ちながらも冷静さを呼び戻す。

 なぜアレックスが『わざわざ食べられたのか』が問題だ。


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