③欠勤の理由。
病欠だと思ったから心配で、深雪にメールしたのに、返信は未だに無い。
それどころか、事もあろうに。
あたしが深雪の身を案じている間、彼女はあたしの彼氏と過ごしていたのだ。あり得ない。心配して損した、とすら思った。
「今日、深雪が会社休んだのって、それが理由なのかなぁ」
カーテンを少し開いたまま、あたしも元の位置に戻った。
あたしの瞳に、満月が綺麗に映り込む。
「じゃね?俺、今日大学休みだったからさぁ・・・昼間っから呼び出しくらっちまって、大災難だったわ。まぁ、旬夏と会えたから良しとする!」
彼はそう言うと、あたしに笑顔を向けてきた。
あたしも釣られて、微笑んだ。だけど、心中は穏やかではなかった。失恋の話を、同性のあたしにではなく異性である翠に先に打ち明けた深雪の心情が、全く理解できなかった。
「・・・フツーに病欠だと思ってた」
「ま、かなーり病んではいたけど・・・身体はピンピンしてたよ?」
「で・・・今までいたの?ずっと?二人きりで?」
あたしは、三つの質問を一気にした。
「うん。昼からずーっと愚痴聞いてて。気がついたら俺も先輩も寝ちゃってて。で、今に至る。因みに、飯は食ってない」
それには応えず、あたしは続けた。
「で、深雪は?大丈夫なの?」
「さぁ・・・。ま、あの調子じゃ、明日も仕事休むかもな~」
「本当に彼氏と別れたの?・・・いつもの喧嘩じゃ、ないの?」
「マジっぽかったわ」
ふと、窓に視線を移すと。
薄っすらとした灰色の雲が満月を覆っているのが、見えた。
「深雪から何か言って来るまで、黙ってた方が・・・いいかな?」
「いゃ・・・変に隠さねーで、俺に聞いたって言った方がいいんじゃね?俺ら、そういう繋がりなんだし」
「そうだね・・・じゃ、そうする」
「つか、めっちゃ眠いんだけどぉ~。俺、もう寝るわぁ~・・・明日の授業、昼からだから、起こすなよ?」
そう言って珈琲を一気に飲み干すと、彼はあたしのベッドにごろんと横になった。
「あ・・・うん」
あたしはカーテンを閉めてから、翠の隣に横たわった。
数分後には、彼はもう寝息を立てていた。
「おやすみ」
眠っている彼の顔にかかるサラサラの茶褐色の髪を、あたしは指で
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