第19話 傷跡


 「ど、どうしてなんだよ」


 何かが込み上げてくるそして頬を滴る。しばらく出てきた事が無かった。確か最後に流したのは小学校2年生の頃だった。


 「どうして...優からしてきたのにそんなに苦しそうに泣いているのよ...」


 由真には状況が理解できないのだった。それほどおかしな状況なのである。


 「わからない。俺はなんで泣いているんだ。俺は何をしていたんだ。何を考えて...いるんだ。俺には友里がいて、でも友里は俺のこと復讐する?」


 「もう!いい!」


 「何も考えないで!」


 そう言って由真は俺の事を抱きしめる。そのまま俺は何も動かずにいた。


 震える声で言いう。


 「ごめんなさい。優がここまで悩んでるなんて、考えずに私は...私は...自分勝手に...ごめんなさい。」


 「違う、違う、俺が俺がこんな半端な...」


 「何も言わないで!私はただ貴方の近くにいたかっただけなの」


 「どういう...」


 「そのままよ。どんな形であれ、私は貴方の近くにいたいその一心で行動してきた。それ以上は言えない。」


 「私嬉しかった。こんな状態になってしまったけど、私は嬉しかったひと時でも私のことを考えてくれて。」


 「ありがとう。でも、もういいよ貴方の好きなようにして、私と別れてもいいよ。」


 「それだと由真が...」


 「いいの、私はもうやる事やったからいいの」


 「なんだよ。何がしたかったんだよ。どうして全てを教えてくれないんだよ。」


 「私は私の望む未来のために行動するの。もう十分なの」


 俺はだんだんと平常心を保ってきていた。


 「面白いこと言うんだな。この状態の俺に何を残せたって言うんだよ」


 「戻ってきたみたいね。もう既に残せているわ。最初からね。」


 「決意がついたみたいだ。俺はいってくるよ。そうだな由真はすげーよ」


 「あえて聞かないから。どこに何をしに行くのか。」


 「性格悪いよなお前、わかってるくせによ。」


 「さ〜ね私は何も知らなーい」


 「でもありがとな、じゃ、」


 「えぇ、いい報告期待してるわ」




 確かに残っている。深く大きな傷が



 そして俺はスマホを出して通話ボタンを押す。



 「ちょっと話す事があるから今から会えないか?」

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