第13話 純粋だから...


 私は得意不得意なくそつなく全てをこなしていく。それは正解のあるものにはそうかも知れない。例えば勉強は頭に入れれば終わり、スポーツでも大抵は上手い人を見てこの時このような動きをすれば良いと考える。欠点としては真似る事ができるだけで初めての場面に直面すると弱くなってしまう。


 それとは違い姉は別だ。いや優れているのかも知れない、それは姉は興味があることには物凄い力を発揮するしかしそれ以外のものは余程のものでない限り頑張らない。


 「お姉ちゃん最近テスト点数悪くない?高校入る時はトップ10に入ってたのに今は下から10だよ?」


 「いいの、どれだけなったところで卒業したら一緒でしょ」


 「卒業したらどうするのよ。しっかりなっておけば良かったってなるよ」


 「どれもほどほどに頑張っただけでもね一流にならないの。人に負けない一つだけを持っていればいいの」


 「は〜その一つって?」


 「容姿とか?笑」


 「呆れた、自分で言うことではないよ」


 「も〜我が妹よ其方もその美貌を持っているではないか、ま〜私よりはないけど」


 そう言いながら胸のあたりを見てくる姉


 「まだ、だもん」


 「も〜すぐ怒らないの!いつもそうだと彼氏の一人もできないよ」


 「そんな性格のお姉ちゃんに言われたくない!」


 こんな感じで性格は正反対で真面目に話をする事がまずない。


 それにしても見た目は似ているけど、それ以外は共通点がない。友達にもよく顔以外は似てないと言われる。


 「は〜彼氏か、興味ないってわけではないけど、よくわからない。何が良くて、何をするのか、そして好きになるってどんな気持ちなのか」


 聞いてみようかな


 そしてスマホを取り出しメールを送ってみる


 「好きってどんな気持ちなんですか?」


 「いきなりなんだよ。由姫らしくないこと言うな」


 「言葉にしづらい質問だぞ。」


 「では、なんかしたいとか、こう思うとかってありますか?」


 「したいとかは人によると思う。思うとかはずっと一緒にいたいとか独占したいとか、俺の場合は話したり隣にいると楽って感じるな」


 「あとは友達とかではできない事をするとかかな」


 「友達ではできないこと?」


 「鬼かよ。恥ずかしいから言わせるなよ」


 「??」


 「知らないって一番怖いな」


 「例えばハグとかキスとか、まー、その夜の方とか」


 私はこの答えを聞いた時顔が赤くなったなんて事を聞いてるんだと。もっと慎重に考えるべきだった。


 「なんか、すみません。無知でした」


 「ま、まーそんなのより、ないのか楽しいとかこの時間が続けば良いとかって」


 「ちょっと考えてみます。」


 楽しかった事といえばお姉ちゃんと優くんと遊んでたあの頃とか、優くんと話していると遠慮もしないし、むしろ幼馴染だから自然と本音で話せる。あとは・・・


 おかしい?お姉ちゃんはともかくどれもこれも優くんばかり、もしかして私、いやいやそんな事ない優くんには友里ちゃんがいるし、そんなはずはない。


 私今どんな顔をしているのだろう。冗談混じりの笑顔?苦しい顔?そんなわけないか...


 「どうだった?」


 そんな返信が来る。なんで返せばいいの、あなたのことばかりって答えるわけにはいかない


 「よくわからなかった」


 濁してしまった。これでいいの余計な心配をかけるわけにはいかないから。ん?心配?何が?自分の心の整理に矛盾してしまった。


 もし、もしもの話 私が優のこと好きって言ったらどんな反応するのだろう。


 「ちょっと気になったことあるんだけど、もし彼女がいる時に別の異性に告白されたら優はどうするんですか?」


 「ど、どうたんだよ今日は、由姫らしくないこと多いぞ」


 「いえ、恋って物がどう言う感情なのかまだ深く理解できていないのでもしこうだったらって考えたんです。」


 「それでどうなんですか?」


 「そう言われてもな、あんまり意識してないって言うか、急はわからないって言うか」


 「わからない」


 「彼女がいるならそっちを優先させるんじゃないんですか?どうして濁したりするんですか?」


 「そう言うんじゃなくてな、無条件はちょっとアレだろ。つまり相手も真剣だからその気持ちにも向き合ってあげなきゃいけないだろ?誰にだってチャンスは必要なんだよ」


 「優しいんですね。」


 「いや、ただ優柔不断なだけだよ。褒められたことじゃない」


 「いえ、そう考えるのも一つですよ。いろんな人を大切にするってことですよ」


 「大抵は何か一つのことしか優先できません。他の人とは違いますね。いい意味で」


 「ありがとうな。でもこの考えは彼氏失格かもな笑」


 「そうですね。最低です笑」


 「褒めたら貶したりだったなのか笑」


 「今日も遅いので寝ますね」


 「じゃーまた明日な」


 そう言って連絡を終えると途端に胸の高鳴りがあった。不思議だった。普通の終わり方かもしれないけど不自然だ。会う用事もないし、学年も違う、なのに「また明日」ってね。


 不意に猟奇的な感情が頭に流れる。


「私にも...チャンスはあるのかな...」



 

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