第12話 心の矛盾 前編

 高咲 友里 


 私は少し考えてしまった。この人なら私のことをって、復讐の為に付き合ったのに本気になりかけてる自分がいる。あの人ならってね


 そして私は抑えられなかった。あれは本当の私じゃない。本当の私ならもっと上手く立ち回れたのに、どうしてキスなんて


 元カレとは中学生という事もあって少し怖くて何もできなかった。そしてもっと警戒心が強かった私は拒否していた。それがフラれた原因なら仕方ないけど


 優先輩は違っていた。あの純粋な人を前にすると自分がいかに醜い人間かが目立ってしまう。少しずつだが揺れているのはわかる。


 どうしてあの人は時々真剣になるのかこんな私に、あなたをだまそうとする悪女なのに


 そして私は欲張りだ。復讐もしたいが優先輩を手放したくない。


 このまま由姫の事を、復讐のことを忘れて、純粋に優先輩と付き合えたらどれだけ幸せなのか。でも私にはそういう資格はない。いつか天罰が降るのだろう。


 「神様、いるのなら私はなんでも差し出すから今度こそは私に味方して」


 声が震える。



 高野 優


 友里はどこまで本気なのか?あそこまでして本気じゃないとしたらあの人は凄すぎる。


 もしあの話が本当に聞き間違えなら俺はどれだけ酷いことをしようとしているのだろう。これも全て恋愛に疎い俺のせいかも知れない。過去に未練があったとはいえ、キスもしてない相手を取られた復讐だとしてもあそこまではやりすぎだ。


 わからない!わからない!わからない!

 俺はこれからどうすればいい、どう接していけばいい


 部屋の外から足音が聞こえる。誰だ?


 「入るよ〜」


 そしてドアが開く。そこに立ってたのは由真だった。


 「開けるときはなっかをして返事が来るまで待てよ」


 「いいじゃない?別に変なことしてても私は気にしないよ。年頃の男子だし」


 「気にしろよってかそっちの問題じゃないんだよ。こっちが恥ずかしいんだよ」


 「なによ、昔お風呂一緒に入ってたじゃん」


 「いつの話をしてるんだよ。それ学校とかで言うなよ?」


 「そんなことよりなんか悩んでるんじゃない?」


 「何お前、心の盗聴器でもどっかに取り付けてるの?」


 「変なこと言わないでよ。大体わかる」


 「何がわかるんだよ」


 「なんでもよ。優のことならわかるよ。あとその周辺も」


 何を言い出すんだ?由真は人の心でも読めるのか?


 「なんでもってなんだよ。わかった気になるなよ」


 「じゃーなんって言ったらわかるんだろうな〜」


 「そんなのわかるわけ...」


 その言葉を遮るように由真は言った


 「復讐」


 え?今何って言った?


 「な、なんだよその言葉」


 「わかるくせにまだ白を切るんだ」


 「100歩譲ってそれが本当だったとしてもだぞ、何をしにきたんだ。」


 「答え知りたくないの?」


 「なんのだよ」


 「もういいよ。腹割って話して、全部筒抜けだから」


 いつもはヘラヘラしてるのに今の言葉だけは真剣でそして力強かった。


 「わかったよわかったお前には勝てないよ」


 「素直になればよろしい〜」


 「で、どうして助言?をしにきたんだ?」


 「私にも目的があるの、そのため」


 「目的?なんのことだよ」


 「私のことはいいの!どうして私からきて質問攻めされなきゃいけないのよ」


 「そんなに知りたいなら一言だけ言ってあげる。このままだと優が染まっちゃうからその前に回避させておかないとってこと」


 「もうわけわかんねーな、でももう聞いても先に進まないか」


 「モノわかりがいいのね」


 「それでだ、どこまでわかっているんだ」


 「確信はないけど優の性格からして復讐でしょ?」


 「あって入るがどうしてこう思うようになったかってのも知ってるのか?」


 「えぇ、簡単に言えば由姫に嫉妬してることよね」


 「こわ!いつからそこまで知ってたんだよ」


 「4人で一緒に帰る前あたりから、優の復讐はいずれなるだろうって思ってた」


 「じゃーあの帰りは計画的に一緒になったのか?」


 「そうよ」


 「何勝手に遂行してんだよ」


 「私の計画の為だもの」


 「由真の計画すごく気になるんだが、かっこ

  

 「そんなことはあとで言うわ」


 「言ったな?ちゃんと言えよ。」


 「わかったわかった。で、どのあたりなの?」


 「どのあたりとは?」


 「ショックを受けてる所?それともどうやって復讐しようかとか?」


 「いや、違うんだ」


 由真が不思議そうに驚いてる。


 「どういうことよ。普通今の2択のどっちかでしょ?」


 由真が小さい声で考えながら言う

 「まさか、あの子がそんなはずないと思っていたけど、もしそうならまずい」


 「何がまずいんだよ」


 由真がビクッとしていた


 「聞こえてたのね」


 「そりゃ聞こえるだろ。2人しかいないんだし。」


 「そ、それで?どういうことなの?」


 「友里がわからないんだ。由真の話を聞いて復習の話は本当だったんだって確信できた。でも復讐の為だといって、キ、キスとかす、するか?」


 「な、何をど、動揺しているのよ。ど、童貞のお、思い過ごしとかとかでしょ?」


 「おい!お前までなんで動揺してんだよ。全て知ってるんじゃないのかよ」


 「そりゃそうだけど、そこまでは知らないわよ。いつの話をしているのよ!」


 「今日の帰り」


 「!!!」


 ここまで動揺した由真は見たことない。やはり誰にもわからないんだな。


 「なんとなく理解できた」


 「どっちなんだよ。俺は何もわからないんだよ」


 「多分ね、傾いてるよ。復讐から恋に」


 「!!!え?え?まじ?」


 「俺はどうすればいいんだ。」


 「そんなの決まってるじゃない。復讐よ」


 「お前に倫理はないのかよ」


 「私だってあるわよ」


 「つまり?」


 「は〜これだから、つまり主導権を握るのよ」


 「そうことか!あっちがどちらを選んだにしろ俺がその主導権を持っていればこっちが選べると言うことだな」


 「そういうこと!」


 「でもそれが解決したところでどうやって友里みたいな人を俺みたいなのが復讐できるかだ」


 「そんなの簡単よ」


 「??」


 「私と付き合いなさい!」 

 

 

 


 

 

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