第17話 手がかり探し
何としてでも圭佑の精神具現化現象を解決するために、圭佑の行動を観察を始めた。
小さな悩みでも見落とさないように一週間ほど観察をした。
冬音と圭佑と翔夢は同じクラスのため、冬音と協力して圭佑の授業中、休み時間、部活、学校生活のほとんどを観察したが、一向に精神具現化現象に繋がる手がかりはなかった。
ただ一つ分かったことは、学校では誰の前だろうと紅音の前で見せていたしっかり者の圭佑ではなく、バカで場を和ませるのが得意な圭佑だということだけだ。
あまりにも成果がないので圭佑本人に直接話を聞こうとしたが、真姫の言葉が脳裏によぎり、別の方法を模索した。
「そうか、許嫁が関係あるかもしれないのならもう一人の方に聞いてみればいいんだ」
次の手段を思いついた翔夢は最近追加した連絡先にメッセージを送った。
すぐにメッセージは返ってきて、放課後に会うことになった。
学校を出ると校門前に紅音と話している咲絆がいた。
「なんでここに紅音さんがいるんですか。あと咲絆はなんで二人と話しているんだ」
「こんにちは翔夢様。一刻でも早く圭佑様のお話をしたくて参りました。こちらの咲絆様とはたった今、翔夢様の友達ということでお知り合いになりました」
「ここにいたら翔夢のことを聞かれて最初はびっくりしたよ。翔夢にこんなすごい知り合いがいたなんて」
会ってすぐに打ち解けている紅音と咲絆のコミ力に翔夢は若干引いた。
「圭佑の許嫁っていう方がびっくりするだろ。紅音さん、あいつに見つからないように場所を変えましょう」
「そうですね。咲絆様もどうぞお乗り下さい。圭佑様と翔夢様のお知り合いなら尚更です」
「やったー!ありがと紅音ちゃん」
言われるがままに咲絆は辰彦にリムジンのドアを開けてもらい、迷うことなく乗った。
「紅音ちゃんって……。せめて敬語を使えよ」
「いいんです。お友達のようで私はとても嬉しいですよ」
翔夢はリムジンで咲絆に圭佑の精神具現化現象について話した。
「圭佑君は悩みとかなさそうに思えたけどみんないろいろ大変なんだねー」
「咲絆だってずっと精神具現化現象解決してないじゃん」
図星を突かれた咲絆は苦笑いをするしかなかった。
紅音と前回訪れたカフェに到着すると、咲絆は途端に借りてきた猫のように大人しくなった。
「咲絆様、どうかなされました?もしかして雰囲気がお好きではなかったですか?」
「そんなことないよ。想像以上に高級なところでどうすればいいか分からなくて」
「咲絆がかしこまるなんて初めてじゃないか?」
隣でクスクスと笑いながら茶々を入れてくる翔夢のつま先を、咲絆は思いっきり踏んだ。
「かしこまる必要はありません。ここは一般の方でもよく来られるところなので」
それを聞いてほっとした咲絆は紅音に促され、コーヒーとケーキを注文した。
翔夢は前回もケーキを食べたので、今回はカフェオレだけを注文した。
注文した物が運ばれてきたのでいよいよ本題に入った。
「最近圭佑が変だとか、悩みがありそうだとか感じたことはありますか?」
紅音はしばらく俯いて考えるが、はっきりと首を振った。
「お電話をした時もお会いした時も特に何も感じませんでしたよ」
翔夢は諦めずに質問を続けた。
「ゴールデンウィークから今日までで二人に関する記念日的な日はありました?」
「あ、それはありましたよ。去年の五月六日が私と圭佑様の最初にあった日です」
圭佑の精神具現化現象はゴールデンウィーク終わりから昨日の間で発症したものなので、翔夢は大きな手がかりをやっと得ることができた。
「そういえば二人はどうやって出会ったの?紅音ちゃんと圭佑君って本当に接点なさそうだから」
ケーキを頬張る咲絆が突然、紅音に尋ねた。
「そうですね。私が圭佑様に会ったのは去年の五月六日――」
紅音は懐かしげに、だけど少し悲しい声で圭佑に初めて出会ったあの日のことを話し始めた。
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