第4話 似たもの同士
あの後翔夢は彩花に持っているコスプレ全てを見せられた。
中にはバニーガール、ナース服、チャイナ服などもあり結果的には最高のひと時になった。
―次の日―
一日調査をした成果を真姫と咲絆に報告しに空き教室に向かった。
「それで昨日の成果は?」
「コスプレっていいですね。とくにバニーガール」
真姫に足のすねを蹴られ、咲絆には頬をつねられた。
「痛い痛い!成果は精神具現化現象が人の悩みの具現化って推測できることです」
「どうしてそう思うの?」
呆れた顔だった真姫は一変し、真剣な表情でメモをとりだした。
「彩花はコスプレオタクでそれを隠して友達に接してるんですよ。それに友達と話す時は敬語で声色も優しくして。おそらく素顔を隠していて、その事に悩んでいるんですよ。だから仮面なんですよ」
「たしかに納得がいくわね。となると須賀さんの悩みが何か知る必要があるわ。その線なら咲絆さんは何が悩みで爆弾なの?」
二人は咲絆を凝視した。
「私とくに悩みなんてないんだけどなぁ……あ、明日の提出物が終わってないのが悩み!」
「それなら爆弾のリミットは明日のはずよ。悩みの線は一回保留するけど須賀さんの趣味を隠していることと仮面の繋がりは多分確定ね」
メモに書いてあることを一通り整理した真姫が結論を出した。
「どうせまだ調査続行だろ?」
「あら、分かってきたようね。そういうことだからよろしくね」
「彩花ちゃんを変な目で見ちゃだめだよ」
咲絆は頬を膨らませて釘を刺した。
「というわけでまたしばらくは一緒だ」
「えぇー。先輩と一緒だと視線が凄いんですけど」
そんな文句を言いながら彩花は翔夢についてきた。
「彩花ってなんで友達の前だとあの話し方なんだ?」
翔夢は歩きながら質問した。
「私、小学生まではあの話し方だったんです。でも中学生になってネットとかコスプレとかに触れて、だんだん砕けた話し方になっていったんですけど、友達にはオタクって気持ち悪いし昔の話し方がいいって言われてそれ以来友達にはあの話し方です」
「俺は今の話し方の方がしっくりくるけどな」
「私も最初はそう思ってたんですけど今はもうどっちがよくて、どっちが素顔なのかも分からなくなっちゃいました」
彩花は悲しさを紛らわすように笑顔を作った。
「てか、なんで俺には最初から今の話し方なんだ?」
「自分でもよく分からないんですけど、多分似たもの同士だからじゃないですか?みんなの先輩に対しての間違ったイメージを変えようとしませんよね」
そう、翔夢はバスケのトッププレイヤーの子であって元々バスケは上手ではないのだ。
死にものぐるいの努力で手に入れた技術を大勢の人は才能や天才という、くだらない二文字で収めてしまう。
「俺はくだらないイメージを押し付けてくるやつは基本嫌いだ。イメージももう変えられないくらい広まってる。だからせめてイメージを鵜呑みにしなかった人達とだけ関係を持つことにしたんだ」
咲絆は努力をしていたところを見ていたのでもちろんだが、真姫や圭佑はイメージを鵜呑みにしなかった人達だ。
「なんで俺がみんなのイメージと違うって分かったんだ?」
「知らないんですか?先輩、赤井夕璃先生の作品のモデルになってますよ。世界一のバスケ選手の子どもなのにバスケが下手なキャラが血のにじむ努力でバスケ選手になるんですよ」
「おい、俺何も知らないぞ。父さんが勝手にネタ提供したな」
二人は話しているうちに彩花の家に辿り着いた。
「今日もコスプレ見ます?」
「いや、今日はいいや。俺は帰るよ」
「分かりました。それじゃあまた明日ですね」
「おう。明日な」
その日、家で翔夢は彩花の精神具現化現象を解決するかもしれない秘策を思いついた。
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