第3話 仮面の下は見えない
須賀彩花の精神具現化現象が現れた次の日。
誰も来ない空き教室で翔夢は彩花と昼食を共にしていた。
「先輩って咲絆先輩か真姫先輩と付き合ってるんですか?」
質問された翔夢は飲み込んだおかずを喉に詰まらせていた。
「突然だな……。俺は誰とも付き合ってないよ」
「意外です。先輩モテるのに」
「恋愛ってよくわかんねぇんだよな。女子と話してもドキドキとかしないし。あと体育館に見に来る女子は論外だ。例え美人でも好きにならないと思う」
彩花は心底つまらなそうな顔をした。
「でも一番可能性があるのは咲絆先輩ですよね。物心ついた時からの幼なじみって憧れるなぁ」
「物心ついた時から一緒だからこそ、ドキドキしないし家族みたいな感じなんだよな」
「それ、咲絆先輩に言ったらダメですよ」
二人は会って二日目にしてはとても仲睦まじく、昼食を食べ終えた後も会話が弾んでいた。
昼休みが終わる五分前に二人は空き教室から出た。
変な誤解が学校に流れないように、翔夢は彩花の数歩後ろを歩いた。
すると、彩花が何人かの女子に話しかけられていた。
その女子は翔夢も見覚えがあった。
いつも体育館に見に来る一年生だった。
昨日彩花の近くにもいたのでおそらく友達なんだろう。
「あ、彩花だ。昼食一緒に食べたかったよー」
「ごめんなさいね。明日は一緒に食べましょう」
翔夢は聞いたこともない彩花のお嬢様口調に唖然とした。
そして、彩花が友達と話し始めると仮面の透明度が濃くなった。
そして友達は数歩後ろの翔夢に気づき、話しかけてきた。
翔夢は軽く受け流して自分の教室に戻った。
―放課後―
今日は部活がオフなので、校門前で彩花と待ち合わせをしてどこかに遊びに行く予定だ。
真姫に調査のためと半ば強引に決められた。
数分すると彩花が学校から出てきた。
「お待たせ先輩」
「おう。それでどこか行くところは決まってるのか?」
「私の家に来て欲しいです。あ、親は夜遅くに帰ってきますよ」
小悪魔のような微笑で聞いてもないことを言ってきた。
「で、なんでそれを俺に?」
翔夢は今、彩花の家で彩花のコスプレ姿を目の当たりにしている。
「だって先輩このキャラ知ってるでしょ」
「そりゃ、まぁ親戚が作者だからな」
「先輩の家族有名人多いですよね。多分うちの高校のオタクはみんな先輩の親戚に赤井夕璃先生がいること知ってますよ」
今彩花が着ているコスプレは翔夢の叔父――ラノベ作家の
夕璃はラノベ作家として知名度は絶大で、翔夢が生まれる前から活躍している。
翔夢はアニメを見るわけではないが、夕璃の作品だけは追いかけている。
「というか彩花ってコスプレするんだな」
「意外でした?私コスプレするのが趣味なんですよ。コミケにも出たことありますし、SNSのフォロワーは二万人いるんですよ」
彩花はコミケの時の写真やSNSのプロフィールをドヤ顔で見せた。
彩花は気分が上がったのかドヤ顔のまま他のコスプレを見せびらかした。
ほとんど翔夢の知らないキャラだったが、どれも魅力的で見惚れてしまいそうだった。
コスプレを何着も着て見せくれている彩花の仮面は今までで一番透明になっていた。
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