第5話 祖母の入院
あと3日後、また日曜日が訪れるのを憂鬱に思ってた木曜日の給食後、祖母が、倒れて意識不明と学校に連絡が入った!
あんなに元気だった祖母が......
急に、意識不明になるなんて、信じられないけど、確かに高齢なんだから、突然何が有っても不思議は無い。
いつまでも祖母が元気って、勝手に思い込んでた俺の方が、明らかに間違ってた。
校門を出ると、母が、車を止めて待ってた。
「セーラー服と化粧道具有るから、病院着くまでに着替えて、適当に肌だけでもキレイに見せて、ウィッグもつけておいて!」
病院に着くまでって、そんな10分程度で、走ってる車の中で、俺に何が出来る?
取り敢えず、セーラー服に着替えないと!
祖母は、意識不明って言ってた。
意識が戻るまでの間、母に化粧直ししてもらう事にして、まずは、いつも母がやってくれてるように、ベタベタ塗って、パタパタまぶした。
この巻き毛のヅラは、ドレスアップ用で、セーラー服に着ると、アニメか何かのキャラや、コスプレっぽくなる。
そう思うけど、この非常時に、母に文句を言って、別のヅラを用意させる時間も無い。
病院に着き、アルコールを手に付けた後、受付で、おばあちゃんの病室の場所を聞いた。
ノックすると返事が無かったが、母と俺は病室に入った。
祖母は、寝てるような感じで個室のベッドに横たわってた。
おばあちゃん......
こんな血の気の無い、寝てるのか死んでるのか分からない祖母は初めてで何だか怖い。
喉を潤して、裏声を出すよう心してから、祖母の手を握って話しかけた。
「おばあちゃん、分かる?薫よ」
俺の予想では、意識不明の祖母は、俺が話しかけたくらいで、まだ目を覚まさないはずだった。
その間、俺が適当にした化粧を母親に直してもらう予定だった。
それなのに......
「薫ちゃんかい?私は、どうして、こんな所に?」
俺の呼びかけで、すぐ目を覚ました祖母は、自分の置かれた境遇が理解出来なそうだった。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「お母さん!倒れて意識不明になったから、家政婦さん達が私や救急車を呼んでくれたのよ。意識が戻って良かった」
「救急車なんて、大袈裟だね。ソファーにでも寝かしといてくれたら、そのうち目が覚めただろうに」
大した事も無さげに言った祖母。
そんないつも通りの祖母を見ていると、祖母の言う通り、慌てて学校から駆け付けるほどでも無かったかと俺も思えた。
「いえいえ、お母さんは高齢なんだから、少しは用心しないと!」
ホッとしたものの、まだ心配からは解放されない母。
「多栄子は心配性だね。薫ちゃん、学校行っていた時間だったのに、私の為に駆け付けてもらって悪かったね。まあ、そのおかげで、初めてセーラー服姿の薫ちゃんを見られて良かったよ」
セーラー服姿......
そうだった、今の俺は不完全だった!
母に化粧直してもらう前に、おばあちゃんの意識が回復したから、もしかして、ヤバくね?
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