第3話 彼女から疑われ

 日曜日限定のお嬢様をしている俺だけど、別に趣味ではないから、普段は、中学2年生していて、西野小春という彼女もいる。


「薫君、次の日曜、映画見に行かない?」


「悪い、予定入っている」


 何か小春にも勘付かれているのか、土曜だって休日なのに、最近わざわざ狙ってるように日曜日に誘ってくる。


「この前も、薫、そう言って、断った!」


「そうだっけ?とにかく日曜はムリ」


「怪しい!他の女子と会っているとか?」


「まさか!実は、おばあちゃんの具合が悪くて、土曜は母さんが仕事だし、日曜しかお見舞いに行けないんだ」


 おばあちゃん、ゴメン、病人扱いした。


「そうなの。じゃあ、仕方ないね」


 その時は小春も諦めてくれた。

 小春の性格上、すんなりと引き下がると思わなかったが。

 

 翌週の土曜日、俺達は先週見られなかった映画を見ていた。

 これで、小春も満足したと思っていたが、別れ際に


「ねえ、明日も会おうよ、薫?」


 明日、つまり日曜日に、小春はデートしたがった。


「明日は、無理だよ」


「どうして?また、おばあちゃんのお見舞い?」


 それで通すしかないか。

 どうせ、バレないだろうし。


「うん、まだ回復してない。俺と母さんでお見舞い行くと、その時だけは、元気そうにしてくれるけど」


「早く良くなって欲しい!じゃなかったら、ずっと日曜日にデート出来ないままだから」


 小春はそう言ったが、それは適切ではない。


 祖母が元気な限り、俺達は、日曜日に決してデート出来ない。

 だけど、女装して祖母宅を訪問する為なんて事、口が裂けても言えない。

 小春だけじゃない、誰にも、あの姿だけは見られたくない!


  翌日、俺は、朝7時に起こされ、卵かけご飯を食べ、1時間ほどのメイクと窮屈な着替えで、いつもの日曜日通り、どこから見ても可愛らしいお嬢様に変身して祖母宅に向かおうとした。


 ガレージから出たばかりの車が、ゆっくりと走り出した時に、すれ違ったのが、小春だった。

 祖母宅に行こうとする朝早い時間だけでも、俺と過ごしたかったとか?


 小春は、すれ違いざま、女装の俺の方に驚いたような視線を向けていた。


 バレた......?


 車で通り過ぎた後、何度か、小春の方を見ると、俺の家のドアホンを押していた。

 留守だと分かった時点で、車の方を向いているのが見えた。

 

「今の子、薫の知り合い?」


 俺の動作もバックミラーから覗いてた母が尋ねた。


「俺の彼女の小春」


「薫、付き合っている子いたの?もうそんな年頃なのね」


 感慨深そうな母。


「んな事より、俺だってバレて無いか心配だ」


「大丈夫じゃない?今のあなたは、ゴージャスな美少女だから」


 能天気な母の言葉を鵜吞みに出来ない。

 小春は、母より一緒にいる時間が長い。

 それに、日曜日は訳有りな事を知っている。

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