第10話

~次の日~


俺は…院長先生に言われた言葉に…頭を鈍器で殴られた様なショックがあり、何となく…気分を変えに、外へモーニングに行こう。

とシャワーを浴びた。

服に着替え、細身の、ジーンズにニットを軽く羽織る。

鍵と財布を持ち、部屋を後にした。


と……その時だった。見かけた顔が、近くの電信柱に立っていた。

『鈴村君!おはよー』


『?……あ!小田君』

『今から…ちょっと時間あるか?』

と小田君は、いつから待っててくれたんだろう?と聞く事も出来ず、


『激甘なパンケーキ、食いにいかね?』と…車のキーをクルクルっともてあそんでいた。

『三門レンから手紙預かってんだよな?』


『!………え?』

さぁいこうぜ!と助手席へと促された。


車の中で、小田君は

話を始めた。

『鈴村君…ありゃダメだよ?院長先生が感づく以前にバレバレだわ、ワハハハッ(笑)』


『え?……そんな、』

恥ずかしくなり、俺はうつむいてしまった。


店に着くと…小田君と俺は店内へと入っていった。俺たちはテラス席へ案内された。

外はまだ…うっすらと北風が吹いていた。


小田君が、そんな姿を見ていて…俺にコートを貸してくれた。


店員がメニューを聞きにくると……

小田君は、俺、この

イチゴホイップクリームのパンケーキってヤツにしよ?

と子供の様に喜んでいた。鈴村君は? と…


『俺はお任せでいい。ホット珈琲が欲しいな?』

『お?パンケーキ頼んだら…ドリンク付だって!やりー、』

小田君は妙に明るかった。


一通り注文が終わると店員は人混みの中へと消えていった。


『で…手紙、読みたい?………。』

小田君は、俺に確認をとった。俺は…しばらく考えて

『……読む。』と言い小田君からレンの手紙を受け取った。


一瞬、開ける事を…ためらったが、 小田君は読んであげなよ?と促してくれた。


手紙を開けると……

レンらしい可愛い字がところ狭しと並んでいた。

『~鈴村君へ~』

と最初書かれていた。文章を読み進めていくと……


2人で過ごした時間がとても楽しくて、迷惑をかけた事も…謝っていた。それから、色々と束縛もなく…今後も2人で過ごしていきたいです。とか……。


俺が居ないとリハビリも楽しくない。その他にも2人きりで…


恋人として、


逢いたい~


と締めくくってあった。

レンからの手紙を読み終えると…気持ちが、ス~っと落ち着いてきた。俺みたいな情けないヤツに……レンは……。

小田君も元気だせや!鈴村君!と俺の肩を

ポンッと叩いた。


俺は笑顔で返した。


パンケーキが運ばれてくると…そのホイップクリームの量の多さに…俺たちは格闘しながら食べ進めていた。


俺のパンケーキは、

マンゴーのパンケーキだった為に…とてつもなく自然な甘さがクセになりホイップクリームと実にマッチしていた。

俺たちが食べ終わるとドリンクが運ばれてきた。小田君は、

ホットチョコレートドリンクを飲んでいた。


俺が…

『甘くないのかよ(笑)』と突っ込みを入れると……

『これがクセになるんだよな~?ハハッ』

と笑っていた。


小田君が急に真面目な顔付きになる。

『鈴村君とレンさんみたいな経験、実はさ、俺にもあったんだ。』


小田君は、話を始めた。研修中にお互いが気になる存在であり、また親密な中になるまで、余り時間を様さなかった事も……。運良く誰にもバレなかったけど…彼女は俺との平和な日常が、楽しくて、退院したらデートしようと……


俺も男だから…研修中の身分じゃ、格好がつかない。だから一人前になったら、改めて

交際を申し込む為に…迎えに行くから……と約束をした。


ただ。一人前になった時に…電話を掛けたら…彼女は婚約者が居たんだ。ショックだったけど…俺は俺の人生だし、次なる恋を見つけたんだ。


と笑って話していた。


小田君は、俺に問いかけた。

『万が一……俺みたいな目に合うかもしれない。それでも、三門レンを攻めずに要られるか?……』

小田君は、真面目な顔をしていたが、すぐに笑顔に戻った。


『俺……甘いな?』

小田君はジョークを、飛ばす。

『パンケーキみたいにな(笑)』

さぁ、帰るか?と小田君は準備を始める。


レンの手紙を読み、

小田君の経験談を聞いていたら……

急に現実味を帯びて…

昨日の院長先生の言葉が、俺に投げ掛けられた意味も……


何となく理解が出来た。

小田君の分も…会計を済ませると……


小田君は笑っていた。

『すまねぇな。割り勘でも良かったのに…』


『俺こそ、礼を言いたいくらいだ。ありがとう小田君……』

2人で車に乗り込むと……


俺の家まで、ものの

10分で着いた。


『お互い頑張ろう!』

『あぁ、じゃな?』


小田君の車は……

風を切って走り去っていった。



俺は明日から業務が変わる。だけど、

きっと一次的で……

試されてるだけなんだと……


何となく理解が出来た。

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