第11話

俺は……レンにもらった手紙を読み返した。

レンは、現時点では…俺と恋人に成りたいと願っている事実に、


自分の気持ちを…今一度、思い返していた。


レンとキスをした時も手を重ね合わせた感動も……確かに看護士としては、相応しくなかったな……?

と自覚を持つのだが、一時の気の迷い…?


とも思えなかった。

じゃあ一体、何だ…。


自問自答してみる。レンからの手紙…2人きりの時間、確かに……レンの傷心した隙に、と…

勘違いされても仕方がない……だけど、


俺はレンが今まで見てきた男の部類には、

一緒にして欲しくなかった。

その気持ちが何なのか?……俺は、ただ

レンに抱いた、特別な感情を大切にして

行きたかった。レンも…今だけなら…それは、それで仕方ない。


と小田君の話で、少し冷静になれた。

いつか、俺から離れていく時が、仮に

訪れたとしても……


あんなに可愛いレンをどうして責められるんだろう?

俺はレンからもらった手紙の返事を

悩んだ末に書く事に決めたのだった。



明くる日……ナースステーションに出向いた。

『おはようございます!』

『?鈴村君…おはよう。大丈夫?』

俺は笑顔を向けて……冗談ぽく、

『男っすから…大丈夫です。』

『今日から…受け持ちが変わるのよね?』


『がんばります!』と言葉を残してその場から離れた。

ご飯の時以外…時間があるので…俺は率先して…気が付いた所からゴミの後始末を始める。

途中……小田君から…声を掛けられる。

『負けんなよ?』と…俺は『おう!!』

と返事をした。手紙の返事を昼ご飯の配膳の時にでも…

渡そうか?考えながら作業をしていると…


レンがこちらを気にしながら様子を見ていた。俺は仕事中は与えられた事に対して…

真剣に取り組んでいた。いつもなら…

レンと外へ行っていたかもしれない。


レンは、俺のゴミ掃除やオムツの取り替えの仕事を、

常に見ていた。


俺が…ふとレンの方に目をやると、彼女は申し訳なさそうに…

視線を外していた。


午前中の仕事が終わると、配膳だ。

歩ける患者は自分で、取りに行くシステムだ。

大勢の患者に紛れて、俺はひたすら…お膳を渡していた。

気が付くと…レンの

お膳だけ残っていた。


俺が…レンのお膳を持って部屋を尋ねた。

コンコン!


ノックの音に、レンがびくついていた。

『す……鈴村…君…』


何かを言いかけたレンは、俺のいつもと違う雰囲気に、言葉を失っていた。


『はい!三門さん…きちんと食べて…?食欲は?ある。かな?』

『…………。』


レンは元気が出ない様子で…返事がなかった。

お膳の上に…俺はレンに手紙の返事を置いてレンの部屋を後にした。


『す…鈴村君?…』

と呼び止められたが、仕事中だった為に…

その声に…振り向く事をしなかった。


いつもなら…ご飯が、美味しいから…待ちきれない!と楽しい会話をしていたのだが、


レンは、俺の姿を見ても語りかけなくなっていった。

俺は疑問に思った。


返事を読んでないのか?…何かバレたか?

と、気にはしながら、午後の事務作業を

ナースステーション内で…ひたすらこなしていた。



数日後……

俺が出勤する時間帯にレンは無理をおして…一人で外へ出ていた。


俺の姿を見るなり、レンは叫んだ。

『鈴村君!!鈴村君!』

俺がレンの側に…暖めに向かう。

いつもと変わらず、

レンの冷たい手を包み込むと…


レンは言った。

『私は、私……あの、一時の気の迷いなんかじゃないわ!!私……心の底から…鈴村君を好きなの!!違う。愛してるの!!だから……鈴村君!私を一人にしないで!もう…鈴村君の居ない生活なんて!考えられない。』


レンは泣きじゃくっていた。壊れてしまうんじゃないかと……

包み込む手を…引き寄せた。


レンはバランスを崩して…車イスから…

落ちそうになった。


俺は瞬間的にレンを

思い切り抱き締めた。


久し振りの甘い香り…抱き締めた感覚が、

俺の熱い気持ちを…


再び呼び起こした。


『レン…?お前、本当に俺で良いのか?』

レンの頬をつたう涙を吹きながら、




俺はみんなが見ている前で……

レンと再び愛を

確かめ合った。




院長先生からの通達が来ていた。


みんなからも…声が、漏れる。


『君らの愛は確かだね?……良く分かった。』

病棟から…おじいちゃんや、

おばあちゃん達からも祝福をもらう。



俺は、認められたんだ。レンは、みんなにお礼を丁寧に…

一人一人に頭を下げていた。



レンが車イスから…

立ち上がった。

『す……鈴村君!』


レンの顔は涙で…

めちゃくちゃだった。

『私……私は、鈴村レンになる!……』



逆プロポーズにみんなが唖然としていると…


小田君が用意してくれていたクラッカー攻撃に合った。



俺の元まで、ゆっくり一歩…また一歩と

歩いてくるレンを、



俺は強く抱き締めた。


三門レンは、まだ高校生ですからねぇ?

まぁ、それは…

あの2人なら… 乗り越えられるでしょう!



見てよ?あの2人、

素敵よね?……。


レンが高校卒業後に、俺、鈴村圭斗は

みんなからも認められめでたく…


鈴村レンに名前が変わった。

三門しずくは、レンにそっくりな笑顔を俺に向けて…


こう言うのであった。



『俺も…キューピッド役…たまには良いかもな?よろしく圭斗兄さん!』


ブーケトスを

受け止めた、しずくは『今度は俺の番かよ…忙しくなるな?』



レンのウェディングドレス姿は…

この上なく美しかった。


しずくとレン…

それに俺、3人で仲良くピースサインの写真撮影をした後で……



レンと俺は…

誓いのキスを幾度となくしたのだった。









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