第7話

次の日……。レンが、『歩きたい、』という気持ちの変化を申し送りで話題に上がっていた。

その時…担当医に色々と聞かれた。

『鈴村君…一体きみどうしたんだ?何があった。彼女がやる気を出し始めたんだよ。礼を言うよ!ありがとう!』

俺が…? 途端に俺は


『いや、あの~……北見さんのおかげなんで…俺は別に…。』

とどもってしまった。


レンを担当している

先生は院長先生であった為に…下手に言えない。あの出来事は……と俺は…口をつぐんだ。


2人で青空を見ていた時……レンは微かな声で俺に言葉を向ける。


それは……

『2人だけの秘密ね?』と…。

その後も…レンの歩く事に対して、リハビリの予定を俺なりに…

考えてレンに予定表を渡しに向かった。


リハビリの予定を見たレンは、

『わぁ!これで私は、また歩けれるの?鈴村君…!』

『まぁ、一応レンさんの体力の事も考えてある。』

つい余計な一言をレンに言ってしまった。


『俺がついてるから…。』と…発した途端に俺は顔や耳まで、赤くなる。そんな俺を見ていたレンは、


嬉しそうに、礼を言っていた。

レンが、珍しく…

『外の空気を吸いたいわ。鈴村君…許可してくれる? 』


俺は、迅速に婦長に聞きに向かった。婦長は少し驚いていた。

『鈴村君?やるじゃない!いいわ。許可を先生にもらっておくから…連れてってあげて?…』

婦長はレンの目覚ましい変化を自分の事の様に喜んでいた。


俺がレンに、

『許可取れた。じゃあ、外の空気を吸いに行こうか?』

レンはマスクをし出した。俺はその仕草を

見つめ、


華奢な指だな?と…ついつい…レンの仕草や行動、を見ずにはいられなかった。


外へ出ると……レンは余計に元気が出たらしく…鈴村君!こっちに連れてって…?


こっちは何なの?この木素敵ね?わぁお花畑があるのね~♪と

とても嬉しそうにしていた。


レンの車イスを押していると…非常に軽かった。体重50キロも…

ないんじゃないか?と少しだけ、


レンに話した。

『レンさん…きちんと食べれてるか?……』

『へ?なんで…?』


俺は、レンの手を包み込み

『こんなに細くちゃ…倒れた時…危ないじゃないか?…』

レンは俺の心配をよそに…また笑い出した。


『鈴村君…車イスで 体重測定でもしたの?んもぅ。私は平気よ!前は、もっと痩せてたから…くすっ。』

『ホントに…?』


『うん!ホントに…だからご飯が美味しくって…食べ過ぎちゃうくらいよ?』


『そか?ならいいんだ。』

レンは、少し考えて俺に言葉を向ける。

『鈴村君?一人の患者に対して…そんなに心配してたら、キリが無いわよ?それからね…私は、鈴村君が居てくれるから…毎日が楽しいわ。ふふっ♪』


『鈴村君は看護士じゃない。だから私のワガママを聞いてくれて……当たり前だなって思う様にはしてる。だけど……たまに考えちゃうわ。私が退院したら、逢えなくなるんだな~って……ちょっと寂しいかな?へへっ。』


レンのその言葉を…

真正面から手を握りしめながら聞いていた。

俺は、いつか来るであろう、レンの

退院した…がらんどうで慌ただしい病棟を


想像してみる。


俺は気が付いた。いや、

とうの前に気が付いていたのだ。


俺にとって……

レンはかけがえの無い人になっていた。


レンが、包み込んだ

俺の手のひらを自分の頬に寄せていた。


『鈴村君の手……あったかいわ。ふふっ♪』


レンの唇がふわっと…一瞬触れる。


俺は、気持ちを…

押さえきれず、レンのその艶やかな髪の毛を……


頬に向けて…

撫でていた。レンは、うっとりしながら……


俺の手のひらに頭を寄せていた。


思わず、キスをしそうになったが、渾身のブレーキを心にかけて…


『寒くないか?』


『うん!鈴村君は?寒くない?』


『大丈夫だ……。』

俺は言葉にならない言葉を気持ちの中で…


言ったのだった。



(お前が居るから……大丈夫だ……。)

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