第6話
朝の検温が終わると…お昼ご飯まで、中途半端な時間が残る。
入院している患者達は…各々の時間の潰し方があり、
ある人は、レクリエーションで編み物、または絵を描く人…。
レクリエーションに、ある程度の人数が移動していくと…。
レンは談話する相手も居なくなり、ぼ~っと空を見上げていた。
俺は、何となく…その美しい光景を、
一枚の写真に収めたい衝動にかられる。レンは気配に気付いて…
俺の方へとゆっくり振り向く。レンは俺と目が合うと…途端ににこやかな眼差しになる。
レンが、
『鈴村君!ちょっと来て…!』と呼ぶので、
レンの隣に何となく立った。
2人で青空を見渡していると…レンがいきなり笑う。
『ん?なに?』と話しかけても…レンは、ずっと笑っていた。
『私、また歩きたいな?前までね…?この大空に羽ばたく鳥達みたいに、自由を求めてたわ。始終カメラに追われて…いつしか、私は疲れてたのね…?』
『それから…鈴村君の事も…ホントに悪かったな?って思える。(笑)
私ひどかったね? 』
『ん。まぁ、レンさんも傷付いてた事だからさ。気にはしないよ』
『鈴村君…?』
『私…鈴村君みたいな優しい人に出逢うの…もう少しだけ、早かったらなぁ…って、ちょっと後悔よ?』
俺は…まさかレンからそんな台詞が出るとは思わなくて、
一瞬…言葉に詰まってしまった。
俺が顔を赤らめていると…レンは再び笑っていた。
本当は、レンをなぐさめたかった。その美しい髪を撫でてあげたかった。俺がついてる。とも伝えたかった。
だけど…患者と看護士だけの間柄という…
壁みたいなモノが、俺の考えを…止めてしまう。
レンは、また空を眺めながら…
頬づえを付き…
『鈴村君…空を羽ばたけたら、最高だよねって小さな頃…思わなかった?…』
『…うん…そだな。』
『私…いつも考えてるわ。いつか自由が手に入れる事が出来たら、私は産まれ変われるって……』
『……?』
『産まれ変わったら、私は……好きな人と添い遂げたいって考えていたの…。』
『ねっ?』
レンが、いたずらっ子みたいな目を俺に向ける。その初めて見せるさながら、
天使の様な笑みは…
俺の心に深く深く…
刻まれたのだった。
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